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中学の模試採点バイトをやった感想

このバイト、高校生の時に出会いたかった(笑)

今日は地元の学習塾で、高校受験模試の採点バイトをやってきた。僕たち大学生は絶賛春休み中だが、中学3年生たちは今、後期試験に向けて最後の模試をがんばっているのだ。

そんなわけで、中学生が解いた模試を即日で採点して返却する要があって、暇な大学生たちが招集されたわけである。行ってみると、高校の同期ばかりで同窓会か何かかと思った。


なぜ僕がこのバイトに高校生の時に出会いたかったかというと、中学生の答案の数々を見て、「あ~、こういう答え方、惜しい」とか「おっ、この答え方、うまい」と感じるところが節々にあったからだ。高校のうちに知っていたら受験がもう少し楽になっただろう(あとのフェスティバル)。

いくつかの解答に目を通してみて、特に印象に残ったのは、
・問題の指示の読み取りが足りない
ことで、非常にもったいない成績になってしまう生徒がいたことだった。

「問題の指示の読み取りが足りない」と聞くと、題意を取り違えた頓珍漢な0点解答を想像しがちだが、ここで言いたいのはそういうものではない。


例えば、英作文を例にとってみよう。
「10代のうちに海外に旅行することについて、あなたはどう思いますか?
またその理由は何ですか?3文で答えなさい。」
という問題があったとする。

さて、以下の二つの文章は、まったく同じ点数の生徒の答案である。

Aさんの解答(6点満点中4点)
I agree going to abroad. Because we can learn a lot. I want to go to abroad.
(私は海外に行くのに賛成です。なぜならたくさん学べるから。私は海外に行きたいです。)
Bさんの解答(6点満点中4点)
We should not travel abroad when we are young, because we don't have much knowlege. I think it is very dengerous to go abroad. So, we should go abroad after we learn a lot about foreign countries.
(私たちは若い時に海外に旅行するべきではありません。なぜなら私たちは多くの知識を持っていないからです。私は、海外に行くことはとても危険なことだと思います。だから、海外の国についてたくさん学んだ後に行くべきです。)

えっ?!これで同じなの?!とお思いになるだろうか。実は、Bさんの方がよく考えて文章を書いてくれてあるが、点数はAさんと全く同じなのだ。

カラクリは、採点基準にある。
この問題の採点基準は、

①満点6点。主語・述語がない、3文以外のものは0点。
②10代のうちに海外旅行することについての考え(3点)と、その理由(3点)について書かれている。
③スペルミスや文法ミスは-1点。最大で2点まで減点。

というものである。


①はかなり厳しく、③はかなり優しい基準である。
これは、

・短時間で大量の記述を丸付けするためには①のように採点対象を絞る基準が必要。
・中学生のスペル・文法ミスを厳しく指摘しすぎれば生徒間に極端な差がついてしまうので、③のような救済措置が必要

・・・という大人の事情によるものだということを、今日のバイトで初めて知った。

AさんもBさんも、「10代のうちに海外旅行することについての考え」と「その理由」について触れている。しかし、二人とも、文法・スペリングミスで、2点ずつ落としている。

Aさんは、
✖ I agree going →〇 I agree with going
✖ go(ing) to abroad →〇 go(ing) abroad
✖ ~abroad. Because・・・ →〇 ~abroad, because・・・ 
と、「この短文の中でよぅそこまで間違えられたな」ってくらいの過ちを犯しているが、③の「スペルミスや文法ミスの減点は2点まで」ルールにのっとり、得点は4点である。

Bさんは、
✖ knowlege →〇 knowledge
✖ dengerous →〇 dangerous
と、2つのスペルミス(しかも1つはケアレスミスっぽい)で2点減点。こんなによく考えて書いてくれたが、得点はAさんと同じ4点である。答案を作るのに相当な時間をかけたことだろう。他の問題にかけられる時間が少なくなり、本来なら解けていたはずの問題が解けなくなってしまったかもしれない。


・・・今回はこうした採点システムの是非については(思うところはあるが)置いておく。
今日僕が話したいのは、「受験で求められるのは、指示をきちんと把握する技術である」ということだ。

もう一度問題を振り返ると、問題の指示(条件)は以下のようになっていた。

①10代のうちに海外旅行をすることについての考えと理由を書く
②3文で書く

・・・以上である。
問題文には「1文〇文字以上で書け」とも「難しい語彙や文法を使って書け」とも書かれていない。裏を返せば、この2つの指示から読み取れるのは、「1文は短くてもいい」「簡単な言葉や構文でいい」ということなのだ。

それなのに、頭の中で勝手に条件を追加して、自分で問題の難易度をあげてしまうと、Bさんのような事故が起きてしまう。重要なのは「書いてないことを読まない」と意識することなのだ。


大人になっても、「書いてないことを読まない」を実行するのは、なかなか難しいことだと感じる。Twitterで炎上しているツイートのリプ欄を見ていると、元のツイートには書いていない内容を、読み手が妄想して、過敏に反応しているケースが幾度となく見受けられる。義務教育の敗北・・・

たしかに、文学作品などを楽しむうえでは、「行間を読む」だとか、「言外の言葉を感じる」ことは重要だ。しかし、受験で僕たちが読まなければならないのは、「いろいろな感じ方があっていい『文学作品』」ではない。

受験において、「指示されたことを正確にやる」ためには、読み逃しがないか気に掛けるだけでなく、「今、自分は読みすぎていないか」を意識することが必要なのである。


・・・っていうどこぞの予備校教師みたいなこと書いてしまった、練り物なのであった。

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