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感想文:映画『関心領域』

映画『関心領域』を観に行き、どっしり落ち込んで帰ってきた。

予告を観れば分かる通り、アウシュビッツ強制収容所の隣で暮らす家族の物語。正直、これ以上に内容の説明をしようがない。

隣から漏れ聞こえる悲鳴や怒号を聞き流しながら、収容所の司令官である父の誕生日を祝い、談笑をし、身内を呼んでパーティーをする。ユダヤ人を焼いた灰で草花を育てる。彼らの持ち物であった服や装飾品を躊躇いなく分かち合う。

映画が進んでいく中で一家が考えを改める訳でも、差別に対して立ち上がる訳でもなく、ひたすら平穏に日常が続いていく。

一方で、彼らが何も感じていないのかというと、それは違う。置き手紙を残して去っていく妻の母親、ラストシーンで嘔吐をするルドルフの描写を見るに、何も感じないことを選んでいるのだと思う。

だって、考えたところで仕方ない。どうにも出来ないことと現状の暮らしを天秤にかけ、犠牲の上で成り立つ幸せを意識的に受け入れている。

唯一の希望があるとすれば、夜な夜な収容所に忍び込んで林檎を配る少女の存在だが、その林檎を奪い合って処刑される者たちがいる。

やるせない。
何が一番やるせないって、この家族と私が本質的に同じであることだ。
海外では紛争の真っ最中だったり、国内では訳の分からない法案が通ったり、当たり前の権利を得られない人達が何年も前から声を上げていたりする。

諸問題をひとまず棚上げしながら、私は日々の生活を送る。映画を観て落ち込んでも、帰りに夕飯の買い物をして、カレーをたくさん作って食べた。
身につまされても尚、食事が喉を通りまくる自分の鈍感さがやるせない。せめて、気が向いた時にだけ行っている署名や募金だけでも続けようと思う。

もう、今の気持ちでは何を書いても白々しい。
この感想文は落ち込んだまま終わろうと思います。

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