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嘘も方便、嘘は面白い。

自治会ニュースは、お笑い番組の何十倍も面白い。その一端をお話しよう。

拙宅の北側から20メートルの所に市が管理してる池がある。人工池ではない。古老によれば、「池の水は縄文中期時代から湧いている水なんだ」そうである。

昨年11月、その池に錦鯉を12匹放した人がいる。誰が放したのが未だに分からない。その池の周りを掃除する班の人たちは、湧水の中で泳ぐ鯉を見て、口々に「錦鯉って綺麗ね。誰が放したのかしら」と言っていた。そのやりとりを聞いていた私は、(殊勝なことをする人がいるものだ。)と思った。班のEさんの話では、「一匹2万円は下るまい」ということだった。その班の人たちの大半は大喜びであった。

その池を南にして数メートルに隣接するOさんは、その錦鯉に今朝も食パンを与えていた。

ところがある日、ニュースが飛び込んできた。
「鯉を入れた人がいる。その鯉が悪い細菌をもっていたら、生態系に悪影響である。よって、市役所に撤去してもらうよう話をした。」

凡そこんな話である。そんな頭のいい人がいるのだ、と思いながらそのニュースは忘れていた。

ここからは暮れの話である。その池の前で流麗な錦鯉を見ている人がいる。それも何か調査をしている感じである。で、「こんにちは。鯉をご覧ですか。」と軽く挨拶をした。

しばし世間話をするうちに、内緒の話をしてくれた。
「実は市役所から何とか鯉を撤去して欲しいと、依頼され困っている。うちは造園業なのに回り回ってうちに依頼してきた。どこからも断られたらしい。こういうの、困るんだよね。」

そう言いながら、「気品のある錦鯉を食べるわけにもいかない、困ったもんだよ。」と言って造園業の社長は大きな車に乗って去っていった。

きょう、自治会の班長会があった。風の便りだと、「市役所の担当者から、錦鯉の調査をした結果、悪い菌はもっていない。よって当面見守ることにする。」という見解が伝えられたそうな。

面白いと思った。

市役所は、右顧左眄しながらその場しのぎの風見鶏になっていたようだ。おそらく生態学的な調査はしていないだろう。

何たってOさんの錦鯉への恋ぶりを見たら、事件になりそうである。面倒なことに深入りしないようにした、というのがオチである。

嘘も方便。時にいい嘘もある。

嘘は面白い。

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フンボルト
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