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焼きとりの八兵衛_天神店

しとしとと雨が降ったとある日、私は焼き鳥を食べるべくバスに乗った。

夕方から雨は止みそうな予報ではあったため、家を出る直前まで傘を持つかどうかを悩んだ。家を出るその時刻に外を見ると、雨がぼちぼち降っていた。

私は傘を確認する。置いて帰っても問題ないビニール傘か、ポケットに入る折り畳み傘。どちらをさしていこう。折り畳み傘の方がいいかなと思ったが、つい先日、持ち手の部分が壊れてしまったことを思い出した。

それは突然のことだった。

愛犬が私の折り畳み傘で遊んでいた。本当は取り上げるべきだったのだろう。しかし、その日の私は、いつも通り面倒くさがりだった。そのため、愛犬から傘を取り上げることはしなかった。そして、そのまま放置した結果、愛犬が放置していた折り畳み傘に、私は尻餅をついてしまった。自らのケツ圧により、私は傘の持ち手を破壊した。安産体型のボリューミーなケツは一見ふんわりとして見えるが、実はそうではなかった。やすやすと傘を破壊する私のケツは凶器である。

とは言え、持ち手部分がぱきっと折れるだけで済んだ。59.5キロの全体重をかけられたSiriに持ち手が粉砕されたわけではない。そのため私は、そのうち接着剤でくっつけようと、壊れた持ち手も傘も捨てずに取っておいた。しかし、私のそのうちはなかなかやってこない。未だにそのうちはやってこず、まだ再会することのない傘本体と持ち手が部屋の片隅で佇んでいる。

折りたたみ傘自体は使えないこともないので、使用を再開することも考えたが、その日は初対面の方と食事をすることになっていた。さすがに壊れた傘を持ち歩くのもなあと思い、ビニール傘を選択した。傘立てにいくつかある傘の中から、忘れてもいいようにと古いものを選んだ。

バスに乗っている私は少し緊張していた。なんせ、初めて会う人とご飯を食べたり会話をしたりするのは緊張する。うまく喋れなかったらどうしようなんて思うのだ。私のドキはムネムネしていた。緊張により少なからず胸の筋肉が動いているに違いない。このままムネムネし続けたら、鳩胸になるかもしれない。そういえば鳩の胸肉を食べたことはないが、ムネムネした胸肉だったら、脂肪と筋肉が程よい感じのバランスになっていて美味しいんじゃなかろうか、なんてことを考えたりはせずに、ただただバスに揺られていた。

お店は福岡市中央区にある焼きとりの八兵衛 天神店。

焼きとりの八兵衛 天神店福岡県福岡市中央区今泉2-5-28

絶対に間違いない焼きとり屋さん。店舗もいくつかあり、八兵衛から暖簾分けした焼き鳥屋さんも色々とある。数店舗行ったことがあるが、どこに行っても間違いない旨さだと私は思っている。

突き出しとビールとクリームチーズの醤油漬け
豚バラと砂ずり
ごまかんぱち
知多ハイボール
そら豆の串揚げ

どれもこれもやっぱり美味しい。そら豆の串揚げは、ペースト状のそら豆がコロッケみたいになっていて、めちゃくちゃうまい。八兵衛に行った際にはぜひ、召し上がってほしい一品。

初めは緊張していた私だったが、お酒も進み会話も進み、とても楽しい時間を過ごせた。あっという間に三時間が過ぎ、もう一軒行きましょうかということで、別の店を探すことにした。

傘立てに置いていたビニール傘を一本手にとる。傘立てに置いてあるのは、どれもこれも同じようなビニール傘で、私は自分が置いていたあたりのビニール傘を手に取った。
しかし、手に取ってみて、持ってきた時より傘がボロいことに気づいた。

「ち、どうせ間違うなら綺麗なやつにすればよかった」と心の中で思ったつもりだったが、どうもその言葉は口から出ていたようだった。まあ、品のないことを、と思わんでもないが、所詮私はその程度の人間である。それに、所詮はビニール傘。破れていなければどれでもいいし、もうどれが私の傘なのかはわからないし、とその傘を持って帰ることにした。

次に訪れたのはケバブバーアンプル。

ケバブバーアンプル|福岡県福岡市中央区大名1-1-21

とにかく店員さんの顔面偏差値が高い!とテレビで言っていて、一度行ってみたいと思っていたので、そのお店に入ってみた。

おしゃれな内装に、美男美女。いまいち接客に愛想はない気がしたが、お客さんがお姉さんを捕まえて注文以外の話をしている様子も伺えたので、ニコニコしていたら勘違いをする客もたくさんいるのかもしれないな、とか、一応好意的な目でみてみた感想を書いてみる。美男美女は癒し。かわええ、と思いながら酒を飲む。

壊れかかって正常に機能していないと思われるワニワニパニックで遊びながらケバブを食べる。いや、私は食べていない。すでにお腹いっぱいなので、お酒だけ頂いた。しかし、なぜかワニに食われまくった気がするが、気のせいだろうか。

よくわからんが、パッションフルーツのカクテルを飲んでみた。

楽しい夜は更けていき、ではまた〜と、その日は解散。私は傘立てからビニール傘を一本手に取り、タクシーに乗り込んだ。そして、タクシーでふと自分の手にした傘に目をやる。

そこにはとても綺麗なビニール傘が一本ありましたとさ。



おしまい




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