そうだ 洗濯機、買いに行こう。
洗濯機が壊れた。
厳密に言うと、洗濯機を壊したが正しいかもしれない。
いや、もっと厳密に言うと、洗濯機は壊れていない。
我が家のドラム式の洗濯機は、家にやってきて10年を超えている。11歳の息子が生まれた時にはすでにドラム式の洗濯機だったので、11年は超えていることになるだろう。記憶は曖昧だ。覚えていない。
壊れたと言いながら、壊したと言い、そして壊れていないと言うのには理由がある。
🧺
壊れたと思ったのは7月の中旬のこと。
ドラム式の洗濯機から洗濯物を取り出そうとしたら、息子のズボンの紐が洗濯機の中のプラスチックのよくわからないパーツに引っかかっていた。
私はぐいっとそれを引っ張った。
丁寧に取ればよかったのだが、私はめっぽう雑な人間なのだ。
雑な人間がやることといえば、一つ。無理やりなんとかしようとする、だ。
この「ずぼんの紐が洗濯機の部品に絡まる」が初めてだったら、私ももう少し丁寧に引っかかった紐を取ろうと努力したのかもしれない。しかし、それは初めてではなかった。すでに何度か同じ現象が起きており、その度に私は強引に紐を引っ張った。これまではそれで、なんとかなっていたのだ。
だから、今回もなんとかなるだろうと思った。
しかし、なんともならなかった。
よくわからないパーツが外れた。壊れた。そりゃもう私は大きなかぶを引っこ抜いた時みたいに尻餅をついた。大きなかぶを引っこ抜いた経験はないけれど、多分そんな感じだろうと言うくらいに尻餅をついた。尻に肉がたっぷりついていてよかったと、この時ばかりは思った。痛くない。肉のおかげだ。そんなことを考えながら辺りを見回すと、知らないパーツが取れていた。かぶではなかった。
あーあ、と思った。
壊しちゃったよ、と。この手の雑な扱いで、家電やなんやらを私はよく壊す。また夫に注意されてしまうとも思った。落ち込んだ気分でパーツを手に取って洗濯機の中を確認してみた。でもその手に取っているパーツが、あまり役立っていそうにない、ただのカバー的なようなものに見えた。ネジを隠してるだけ、みたいな。
ワンチャン、壊れてないんじゃね?
私はそう思った。
こっそり接着剤でくっつけて、事なきを得ようと思い、接着剤を手に取った。接着剤の蓋を開けて、慎重にチューブに力を入れる。しかし先端が固まって、接着剤が出てこない。仕方ない。誤魔化せそうにない。
翌朝、私は諦めて夫に事実を伝えた。
「洗濯機、壊れた」
「壊したんやろ」
ぎ、ぎくっ。
「こ、壊してないもん」
「どれ、見せてみろ」
と言うことで、壊れたパーツを手渡し、夫に洗濯機を見てもらった。別に夫は家電に詳しいわけでもないが、このパーツ一つ壊れても洗濯機は動くのではないかという見解になった。見解の一致。私は洗濯機を壊していないということになった。私は広義的に解釈した。イッツポジティブ!
そして、その晩、いつものように私は洗濯機を回す。
なんか、動いてる。大丈夫そうだ。
そして、そのまま数日が経過した。
今日も元気に洗濯機は回っている。
しかし、不安が私に付きまとう。
このままで大丈夫なのだろうか、と。
私は決意した。
そうだ 洗濯機、買いに行こう。