
私の皿にはコロッケがのらない
今日の晩ごはんが魚の煮付けだと知ったら、きっと小学生5年生の次男はガッカリする。
なぜなら彼は、魚料理があまり好きではない。
魚は鑑賞するものであって、食べるものではない。それが彼の持論だ。
私や夫には、水族館の水槽の中で泳ぐ魚でさえ、“食材“にしか見えないと言うのに、親子でも魚に対する印象は、随分と変わるらしい。
「死んだ魚、見にいく!」
彼はイキイキした目で、いつもそう言った。スーパーの魚売り場は、彼には水族館番外編だった。今でこそ、フライや一部のお刺身は食べられるようになったけれど、小学校低学年までは、ほとんど魚を食べなかった。
そのため、魚料理の日は、彼のために別のおかずを用意する。
今日は、彼の好きなコロッケ。
決まったスーパーの決まったコロッケが大好きで、私はそれを買いに行った。5個入りで328円。
コロッケ売り場で、袋に入ったコロッケを手に取る。
値段を一瞥し、「お」と少し高めの声を漏らす。
298円?安くなってる!
そして次の瞬間、私は大きく肩を落とした。
袋の中のコロッケのサイズが、二回りほど小さくなっている。さらには、数も減っている。5個から4個になっていた。まさか値上げの波が、コロッケにまで押し寄せているとは。

コロッケは二袋もいらない。私は仕方なしに一袋だけカゴに入れる。連想ゲームのように、周りが茶色くて中が白い揚げたものをイメージした。厚揚げだ。私は、自分用に厚揚げを買う。
コロッケは4個入り。
我が家は4人家族。
一人一個なら、本来は4個で足りるはず。しかし、コロッケが大好きの息子には、他におかずがあるとしても、小さなコロッケ一個では物足りない。私は自分のコロッケを諦めたのだった。
「今日の晩御飯は何?」
「コロッケだよ。なんか、小さくなってた〜」
「お母さん!小さいけど、コロッケうまい!」
小さくなったコロッケを、大きくなった体であっという間に平らげる。
私はこんがり焼いた厚揚げに、醤油をじゅっとかけて頬張った。