かわいい男の子にもらった一輪の花の話
「これ、あげる」
小さなかわいい男の子が、私に一本のバラをプレゼントしてくれた。
一輪だけ、透明の袋に入っている赤いバラ。
私はありがとうと、それを受け取る。
その日はホワイトデーだった。かわいい彼は近所に住む私の甥っ子だ。
今度小学一年生になるかわいい甥っ子。実妹の息子。
バレンタインデーのお返しにと、妹が気を利かせて花を買ってくれたらしい。甥っ子は妹の手先となり、私を喜ばせてくれた。
正直なところ、花より団子。いや、花より酒ではあるが、花も嬉しい。そんな私の生態を知っている妹はもちろん花を甥っ子から渡させた後に、ビールを後ろから出してきてくれた。妹よ、さすがだ。さすがだ、我が妹。
私は早速ビールを冷やす。そして、この一輪の花を何かに生けないといけない、と思う。せっかくいただいたかわいいバラだ。枯らさないように大事にしたい。私は早速食器棚から花瓶を取り出すと水を入れた。かわいいお花を丁寧に袋から出して、根元に巻いてある何かよくわからないビニールと濡れたものをピリピリと剥がす。そして、花瓶にバラを生けた。一本のかわいいバラ。
いや、嘘をつくな私。
我が家に花瓶なんてない。食器棚から出したのは、背の高いビールグラス。きっとビールグラスはさぞかし驚いたことだろう。キッチンにはよく冷えたビール。彼はきっと自分の役目を果たすため、食器棚から出され、そしてビールを注がれるものと思っていたに違いない。上から二センチ程度、きめ細い泡を作るため、今か今かと待っていたのだ、多分。しかしそこに、水が注がれた。そして、なにやら一輪の花。俺は、今日初めてビール以外のものを注がれた。花を生かす花瓶に、俺はなった。
そして、私はビールグラスの気持ちも考えずにテーブルに花を飾る。
そして、スマートフォンで写真を撮った。
可愛く撮れたので、早速instagramに
#ホワイトデー #薔薇 をつけて投稿。
すると、すぐに妹からのLINE♪
「姉ちゃん、それ薔薇じゃない笑」
がーん。
恥ずいわ。赤くて花びらいっぱいあったら、そんなん薔薇やろうもん、って思った昨日の私の頭を殴りたい。いや、そこまではない。薔薇って書けるようになるまで、漢字練習帳30ページ、薔薇の字を勉強させてやりたい。それか、実際に薔薇の花を買ってきて、一枚一枚剥いで、薔薇の花びらが一体何枚あるかを数えるまで帰れませんって言いたい。
「じゃあ、この花、なんなん?」
って聞いてみたけど「忘れた」とのこと。
ち、まあ、花に疎い姉妹だこと。
でも多分、きっとこれはラナンキュラスだろうと思う。何かの漫画で出てきたのを思い出した。薔薇みたいに花びらがたくさんあって、ちょっところんとしたフォルムのかわいい花。
赤いラナンキュラスの花言葉は、「あなたは魅力に満ちている」。
好きな花は赤いラナンキュラスですと胸を張って言えるように、私はなりたい。