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学校での健康診断、各国事情

ゆるふわ日記にようこそ、サルタックの真衣です。今日、4月7日は、何の日かご存知でしょうか。「世界保健デー」だそうです。世界保健機構(WHO)が1948年のこの日に設立されたことを記念して設けられたもので、75周年の今年は「Health For All」がテーマとなっているようです。

そこで、今回のブログでは、Health For Allにちなんで、何か健康に関することを…ということで、学校保健、特に健康診断について考えてみたいと思います。「各国…」と題したものの、これまでの筆者の経験から、日本と香港、イギリスだけに限定されてしまうのですが。ただ、この3か所だけでも比べつつ振り返ってみると、各地での学校における健康診断の在り方はそれぞれで、学校保健に対する考え方の違いが表れているように感じます。

出典:WHOホームページ「World Health Day 2023」
https://www.who.int/campaigns/75-years-of-improving-public-health#

1. 日本では、学年初めに健康診断

みなさんも日本で義務教育を受けていれば、学校で健康診断を受けたと思います。日本においては、学校保健安全法に基づき、児童生徒の健康診断が実施されることになっています。「毎学年定期」とあるように、施行規則では、検査の項目に加えて、検査の時期も、小学校・中学校の全学年、高校・大学では第一学年において、各年度の6月末日までに健康診断が行われること、と定められています。

個人的には、健康診断のタイミングもここまでしっかり定められていたことに驚きでした。

また、調べていてもう一つ意外だったのは、「学校保健の推進」として文部科学省のウェブサイトに記載された内容でした。それによると、学校保健とは、学校において①「児童生徒等の健康の保持増進を図ること」、②「集団教育としての学校教育活動に必要な健康や安全への配慮を行うこと」、③「自己や他者の健康の保持増進を図ることができるような能力を育成すること」などとなっており、集団生活に必要な健康・安全という視点が明記されていました。確かに、日本の学校は集団生活への適応を重要視するように感じましたが、学校保健推進においても外せない視点だったようです。

2. 香港では、オプションとしての健康診断

香港の小学校に転校してから、気づいてみれば、なかなか健康診断の機会はありませんでした。過去に紹介した通り予防接種は学校でしてくれましたが、身長や体重を測る健康診断はなく、視力検査や聴力検査のお知らせはもらってきましたが、それらは希望者への有料オプション、という位置づけでした。それぞれ日本円にして3000円~4000円ほど。

改めて調べてみると、香港政府衛生署(Department of Health)のホームページに、学校保健(Student Health Service)の主なサービス内容の一つとして健康診断(Physical examination and health assessment)が記載されていました。

具体的には、2022-2023年度は、新型コロナウイルス感染症の状況に応じて変更される可能性はあるものの、学校を通して年度初めに申し込むことができ、保健サービスセンターから個別に指定された日にセンターに赴いて健康診断を受けることになります。香港住民等は無料で受けることができ、対象は、小学校1年生から中学校3年生までの児童生徒で、各学年での検診項目も細かく定められています。

このように、時間と手間さえかければ無料でサービスが受けられるものの、お金を払えば便利なサービスもオプションとして豊富、というあたりが、香港っぽい感じがしました。

また、HPを見る中で気づいたのは学校保健の目的に「身体的な健康と、精神的な健康」と併記されていたり、「Emotional Health Tips(情緒面での健康へのヒント)」が大項目として並んでいたりするなど、メンタルヘルスについての配慮が随所にみられる点です。香港では子どもの自殺率の高さが問題になってもいるため、メンタルヘルスに力がかけられているのかなと感じました。

出典:衛生局ホームページ「Emotional Health Tips」
https://www.studenthealth.gov.hk/eindex.html

3. イギリスで、健康診断はない?

イギリスで暮らしていた時、そういえば、今子どもたちの身長や体重はどれくらいなんだろう?と思ったことがあります。特に薬を処方してもらう時など、体重を聞かれて答えられなかったことも。それまで日本で暮らしていた時は、保育園や定期健診などで測ってもらっていたので、意識して自分で測ったことがなかったのです。イギリスの公立小学校では、健康診断みたいなものはないのかな?と思っていたら、ある日、息子が今日学校で身長と体重を測ったと言って帰ってきたことがありました。だからといって、身長と体重がどれくらいだったのかは分からず、本当に測ったのかな?と訝しくさえ思っていたら、後日、体重は適正範囲内でした、という趣旨のレターが届きました。それは良かった、と思う一方で、身長と体重は結局どれくらいだったのだろう、せっかく測ったのなら教えてもらいたかった…と思わずにはいられませんでした。

改めて調べてみると、準備学年(4~5歳。詳しくはこちらの過去ブログをご覧ください。)と小学6年(10~11歳)時において身長・体重の計測が行われる「National Child Measurement Programme」(全国児童計測プログラム)というものがあるそうです。この目的は明確で、小学校段階の子どもの肥満度を計測すること、そのデータを全国的に集めて、子どもに対するより良い保健サービス提供のための一助とすること。つまり、こどもの成長の記録、といった要素は全くないため、計測したデータを各家庭にフィードバックするとは限らないんだな、と納得しました。

また、このプログラムの説明で印象に残ったのは、プライバシーへの配慮です。計測した数値を先生や他の児童にはシェアしない点が明記されるなど、個人情報として注意深く取り扱われるようです。このプライバシーに対する意識から、学校で一斉に健康診断、という状況は現実的ではないんだな、と理解しました。一方で、肥満への社会的な問題意識が高まる中、体重のチェックに特化した「National Child Measurement Programme」が、プライバシー保護との妥協案として実施されているのかなと思います。

出典:UK House of Commons Library (2023)「Obesity statistics」
https://researchbriefings.files.parliament.uk/documents/SN03336/SN03336.pdf

おわりに

以上、WHO75周年にちなんで、日本、香港、イギリスの学校での健康診断を振り返ってみました。集団生活を意識した日本、手軽なオプションサービスが選べてメンタルヘルスメニューも豊富な香港、肥満への対策とプライバシーを両立させるイギリス。それぞれの社会における問題意識や価値観を反映したあり方になっていることが伺えます。

最近のゆるふわ日記でも、歯の治療の体験談からは、健康的な歯や歯並びについて、ラマダンの現地リポートからは食事と体の働きについて等、健康について考えるきっかけになるブログがいくつかありますので、この機会に是非読んでみてください!そして、何かと慌ただしい新年度ですが、みなさんも健康に過ごせますように。


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