見出し画像

Grade 9: Winter Break - The Rabbit Hole

※前回「明日」Hageと会うと書いたけど実際は二日後だったみたい

1月8日 日曜日
たぶんまだ午前中にHageとは学校最寄りのマクドナルドがある商業施設のバス停で会うことにした。

当時の携帯で撮ったその商業施設。
ここのマクドナルドは学校の生徒の溜まり場だった

Eくんはいつもお昼に会いたがるけどHageは早いんだなとEくんと比較していた記憶がある。
Eくんはいつも約束時間前に待ち合わせにいたけど、Hageは少し遅れてきたような気もする。
なんでここに来てしまったんだろうと今更反省して1人バス停のベンチに座っていた。

ここですることもないしと一緒にバスに乗っていつもEくんとも行く繁華街に行った。
見慣れたバス、見慣れた道、見慣れた景色。だけど隣にいるのはEくんじゃなくて。それが違和感だった。

正直、この時のことは一部を除いて少ししか覚えてない。
なんの会話をして、どれくらい会ってたのかも。
ただ、ショッピングセンターの中にあるマクドナルドでお昼を食べたのは覚えてる。Hageは私の分の食事まで払うと言ってくれた。
「デートじゃん.…」そんなつもりじゃないのに。そう思った。
いつも私がマクドナルドで頼むセットのドリンクを「なんそれ?ちょっと一口頂戴」といって奴は飲んだ。お前よくそんなん頼むなあって言われたのかもしれない。日本人の人は頼まないものを私は頼んでたから。

学校内のカップルの話をして、まじか!って言い合ったり。
冬休み入ったばっかにあった悲惨なカラオケの話をしたり。
そして、「なんでEくんMSNの名前変えたんやろうな〜やっぱ昔好きやった人と再会してそっちが良くなったとかあるんかな」そんな話もされた気がする。

私はこの頃にEくんと交わした「最近なにか考え事してるんか寝られへんねん」という言葉が心のどこかで引っ掛かっていて、それが今、「MSNの名前が変わってしまった」という事実とを結びつけていた。




最後に、Hageは昨日日本から帰ってきたばかりのFちゃんを振ったと報告してきた。

しかも非常に無責任なのが、「お前も次はG11になるねんし勉強忙しくなるから別れよ。俺もG10で大変になるし」と一方的に終わらせたらしい っとあとからHageから聞いた。


「あとはお前が決めや」

Hageは途中で腹痛を訴え、私は常備してた整腸剤を渡した。店内が寒すぎて2人で凍えてた。
猛スピードで走るトロッコの、線路の切り替えは私に完全に委ねられた瞬間だった。

それでも結局、会ったからといって結論が出るわけでもなく、話は並行を辿る。

腹痛もあることだし、別にデートをしに来たわけでもないので私は帰ることにした。
Hageが惜しそうにバス停まで一緒についてきた。
なんの話をしただろう。今回のことについて意識しないように、目を合わせないように、隣に寄り添うように立つHageを横目にバスが来るのを待っていた。

その瞬間、Hageは私の手を繋いだ。
恋人繋ぎだった。
あまりにも突然で、拒む隙なんてなかったとおもう。
Eくんじゃない誰かと、Eくんとまだ付き合ってる間に、手を繋いでしまった。Kuriがしてくるような「友好的」なスキンシップなんかじゃなくて完全に「異性」として好意を寄せてるときのそれだった。
Eくんには握り返せる手を、私は握り返せなかった。
Eくんとはドキドキしてたこの行為は、Hageに対しては嫌悪感だった。

すごくショックで、すごくすごくその場から逃げ出したかった。Eくんに助けを求めたかった。
手が汗で湿ってきた時、おどけながら手を振り解いた。それでも、しばらくしたらHageはまた手を握りなおしてきた。もう、終わった。

この一連の「事件」のあとにぐっと距離が近くなるEくんの同級生であるSugarちゃんに、この事を話したことがある。
その時に彼女は「おてて繋いだくらいで浮気にはなりません。お友達同士でも手くらいつなぐよーwだってソフィアちゃんとお友達の韓国人の女の子だって手繋いでんじゃんw」と励ましてくれたのがとっても心強かった。

次のバスが来たらなんでもいいからとりあえず乗ろう。
そっと手を離して、バスに乗っちゃおう。そう思った。

最寄に行くバスがたまたま来た。当初待ってたバスじゃなかったけど、私は両手で手を振り解いて、このバスでも帰れるから!と言ってバスに乗り込んだ。
状況から察するに多分その後すぐにSMSが来て「さっきはごめん」とか言ってたんだと思う。

その後どうしたんだろう。
覚えてるのは罪悪感と、冬休みのせいで、いつもはすぐに助けを求めれてたIちゃんや、Eくんに報告できないこととで、心が苦しかった。

もうだめだ。もう終わった。もうEくんとは一緒にいられないんだろう。Eくんは私なんか忘れてずっと一緒に過ごしてきた日本の学校の人たちのが大切なんだ。
そんな答えの出ない考えがグルグル頭を回ってた。

この前日にIちゃんと喋った会話:
Eくんは私のことをまだ好きだと思う?
「彼は最後まで彼女に一途なタイプだよ:)」

Eくんはこの日もまたオンラインだった。
Hageとのこともあったし、まだEくんには何もバレてないこと(バレるわけがないのだけど)、Eくんとはまだ大丈夫なことを確かめたくて意を決して話しかけた。
「元気?」

EくんのMSNの名前はやっぱり変わったままで、どことなく素っ気ない感じがしていつもの知ってるEくんじゃなかった。そう、感じた。
どうして?聞けばいいけど、臆病な私は聞けない。

まだEくんのこと好き?
わからない.…たぶんそう。もしかしたらそうじゃないかも。
ここまで来ても自分の気持ちははっきりしなかった
MSNの会話は…いつものEくんらしくない。

返事がなかなか返ってこないことが心配になって、私はIちゃんにもEくんに話しかけてもらうことにした。
自分が無視されてるわけじゃないということを確かめたくて。
遅れてだけどIちゃんのチャットにEくんからの返事が返ってきた。
「How are you and Sarry?」
この質問に対してEくんは「haha…」と返してきたらしい。
Iちゃんでさえも、何かがおかしい。もしかしたらEくんは何か気づいてるかもしれないと言い始めた。

その後Iちゃんがどんだけ心配しなくて大丈夫。急いで結論に達そうとしないで。とかけてくれた言葉も、もう何も頭に残らなかった。
Hageが「まあ俺はまだEくんお前のこと好きやと思うけどな」と言ったって信じられなかった。

正直、この時Eくんが名前を変えてなくて、話も普通にできていたら私は迷うことなくいたと思う。だけどなぜEくんの返信が遅くて、素っ気ない感じがしたのか。それは後で知ることになる。
噛み合わなくなった歯車はどんどん調子がずれていく。
ガタッゴトッ 崩れ落ちそうなまま「未来」を迎える。

明日、遂にEくんは帰ってくる。
私はもう隠し事をしてるのに耐え切れない。爆発しそうだ。










この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?