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「ウォン・カーウァイ 4K」のその先は…Part.2【ウォン・カーウァイの影響を受けた監督作品 他】

9/16から始まった「ウォン・カーウァイ 4K」。
90年代その熱狂の中で当時映画を観た方、ウォン・カーウァイの名前を知ってはいたけど初めて劇場で観たという方、当時からの香港明星迷な方まできっと楽しんでいただけたはず!

しかしここで終わりではない…。
皆さまの映画感度が上がったこのタイミングを逃してはならない!
そこで、ウォン・カーウァイ作品を起点に是非観ていただきたい映画をご紹介します。

Part.1「ウォン・カーウァイ 4K」のその先は…Part.1【もっとウォン・カーウァイを浴びたい!】

ウォン・カーウァイ作品から影響を受けた監督作品

業界を越え、様々なアーティストに影響を与え続けているウォン・カーウァイ作品。
Part.1でご紹介した『プアン 友達と呼ばせて』のバズ・プーンピリヤ監督はインタビューで話されていたとおり、90年代にウォン・カーウァイ監督作品を通ってきた世代です。
まさにその世代が大活躍中の映画界で、特にウォン・カーウァイの影響を公言している2人の監督の作品をご紹介します。

『ムーンライト』

監督:バリー・ジェンキンス/2016年/出演:トレバンテ・ローズ、アンドレ・ホランド 他
第89回アカデミー賞作品賞受賞

マイアミの貧困地域で、麻薬を常習している母親ポーラ(ナオミ・ハリス)と暮らす少年シャロン(アレックス・R・ヒバート)。学校ではチビと呼ばれていじめられ、母親からは育児放棄されている彼は、何かと面倒を見てくれる麻薬ディーラーのホアン(マハーシャラ・アリ)とその妻、唯一の友人のケビンだけが心の支えだった。そんな中、シャロンは同性のケビンを好きになる。そのことを誰にも言わなかったが……。

シネマトゥデイより

物語の中盤、主人公のシャロンがケビンに会いに車を走らせるシーンで流れる音楽を聴いて、思わず椅子から立ち上がりそうになりました。
カエターノ・ヴェローソの「ククルクク・パロマ」。『ブエノスアイレス』の冒頭、イグアスの滝が映る印象的なシーンで流れる曲!
もう何年も『ブエノスアイレス』観てなかったのに反射的に気づいてしまって、いかにウォン・カーウァイの作品が自分の血肉になっているか気づかされました…。たまにこんなご褒美みたいな瞬間があるから面白いですよね。

(C)2016 A24 Distribution, LLC

バリー・ジェンキンス監督によると、このシーンは『ブエノスアイレス』に直接的にオマージュを捧げているとか。

映画好きになった時に「ジャン=リュック・ゴダールやウォン・カーウァイの映画を観ていた」というバリー・ジェンキンス監督は、 インタビューで 「この選曲はあえて意図したものだ。同じ曲が『ブエノスアイレス』でかかっていて、これは直接的なオマージュなんだ。ブラックの車がハイウェイを走るシーンの撮影の仕方まで、『ブエノスアイレス』と同じにしているんだ。」と語る。
「『ブエノスアイレス』 を初めて観た時のことは鮮明に覚えている。僕にとって、初めて観る同性愛を描いた映画だった。『ブエノスアイレス』は僕にたくさんのことを与えてくれた。」と思いを語っている。

cinefilより


『ノマドランド』

監督:クロエ・ジャオ/2020年/出演:フランシス・マクドーマンド、デビッド・ストラザーン 他
第93回アカデミー賞作品賞、監督賞受賞

アメリカ・ネバダ州に暮らす60代の女性ファーン(フランシス・マクドーマンド)は、リーマンショックによる企業の倒産で住み慣れた家を失ってしまう。彼女はキャンピングカーに荷物を積み込み、車上生活をしながら過酷な季節労働の現場を渡り歩くことを余儀なくされる。現代の「ノマド(遊牧民)」として一日一日を必死に乗り越え、その過程で出会うノマドたちと苦楽を共にし、ファーンは広大な西部をさすらう。

シネマトゥデイより

中国出身のクロエ・ジャオ監督は、本作でアジア人の女性監督として初めてアカデミー賞監督賞を受賞ました。
広大な土地で自由に移動し何にも縛られずに生活しているが、心のどこかにどうしても家(home)を意識し、時に反発する姿が現代社会を映している作品。
クロエ・ジャオ監督、インタビューで下記の様に発言しています。

人生を変えるほどの影響を受けたのは、香港の映画監督ウォン・カーウァイ。新作の撮影に入る前、あるいは編集を終えた後などは、決まって彼の『ブエノスアイレス』(1997)を観るそうだ。ただし、ジャオ監督が幼いころの中国は外国映画の規制が厳しかったため、自由に映画を観られる環境でなかったという。その代わりに日本のマンガを読み漁り、最初になりたいと思った職業も漫画家。自己流のマンガを描いてもいたという。

VOGUE JAPAN HPより


(C)2021 20th Century Studios. All rights reserved.

2人の監督が特に『ブエノスアイレス』から影響を受けていることが分かります。
ウォン・カーウァイ作品の中でも『ブエノスアイレス』は舞台が香港外もあってか、他とは違う雰囲気ですよね。
最近ではアジアのクィア映画の傑作として名前が上がります。

香港映画、アジア映画をもっと観る

『七人樂隊』

監督:サモ・ハン、アン・ホイ、パトリック・タム、ユエン・ウーピン、ジョニー・トー、リンゴ・ラム、ツイ・ハーク

香港が誇る七人の監督が、香港の“美しい瞬間”を、全編35mmフィルムで撮った響き合う七つの物語。

『七人樂隊』公式HPより

香港映画の歴史そのもの!といった監督陣に観る前から胸熱です。
香港映画を好きな人に観ていただきたいのはもちろん、この香港映画の良さを凝縮させたようなオムニバス映画はリアル世代でない方にも是非おススメしたい!
ウォン・カーウァイが90年代に自由に映画で表現出来たのも、これまでの香港映画の歴史があってこそなんですよね。
静岡シネ・ギャラリーでは10/28(金)公開です。

「稽古」 (C)2021 Media Asia Film Production Limited All Rights Reserved

「のむコレ」をチェックする

「のむコレ」とは
2017年に立ち上がった劇場発信型映画祭「のむらコレクション」(通称:のむコレ)。
シネマート新宿/心斎橋の番組編成担当・野村武寛(のむらたけとも)氏が、アジア映画に強いシネマートらしく、韓国・中国・香港は勿論、世界中から話題作をいち早く集めた、要チェックなレア作品が目白押しの映画祭です。

「のむコレ」HPより

シネ・ギャラリーのアジア映画好きスタッフ内では、注目度は東京国際映画祭と並んでおります。
王道ど真ん中、絶対面白いやつ!といったものからアジア映画らしい繊細な作品、様子がおかしい作品まで、アジア映画好きの好奇心を刺激する作品を毎年取り揃えている熱い映画祭。
今年も11/11より開催が決定しているとのことですので、是非チェックしてください。

初めてウォン・カーウァイの作品を観たとき、映画はこんなに自由なのか!と衝撃を受け、異国の登場人物の熱に直接触れたような、とにかく忘れられない映画体験でした。
今回上映する側になって、あの特別な体験の恩返しが出来ていたら嬉しいです。
10/13で「ウォン・カーウァイ 4K」の上映は終了しますが、今後もアジア映画含め沢山の映画を上映いたします。
自分にとってのウォン・カーウァイ作品のようなものに、皆様も劇場で出会ってください。(出来れば静岡シネ・ギャラリーで!)
すでに出会っている方も、こういうものはなんぼあってもよいのでどんどん増やしていきましょう!
劇場でお待ちしております。

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