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職場ストレスの1分対策:明日からトライ!

仕事でミスした、同僚に陰口を言われた、上司に叱られた、今夜も残業になりそう......職場で起きるさまざまなことが原因で、落ち込んだり、イライラしたり、不安になったり、焦ったりするのは、よくあることでしょう。時にはそうした精神的ストレスが身体に影響して、胃炎、頭痛、疲労、不眠症などに悩まされるかもしれません。

私は現在アメリカでマインドフルネス講師兼ライフコーチとして活動していますが、以前には都内の旅行会社やテキサス州オースティン市が運営する文化センターで、正社員として勤務した経験があります。海外旅行ブームだった80年代に勤めた旅行会社では残業が多かったのに加え、お茶汲み係のような古い習慣も嫌で、ストレスが限界に達して胃炎を起こしました。文化センターでは、公共機関特有の非合理性やマニュアル重視のやり方が性格に合わず、眠っている間に歯ぎしりしたり、体重を落としてしまいました。

私がテキサスで教えているReduce Stress with Mindfulnessクラスの生徒さんや、ライフコーチングのクライアントにも職場ストレスに悩む人が多く、そうした皆さんの話を聞くたび「それ、すごくわかります!」とうなづいています。

ストレスを溜めないためには、ストレスを感じた時点ですぐ対処することが大切です。ストレス要因に対する最初の反応(思考、感情、身体の感覚)を、自分の意見や価値判断を加えずただ観察することができれば、そうした不快な反応が軽くなり、落ちついた気分に戻ることができます。また落ち着くことで自動反射的ではない、自分にとって最適な行動を選択、実行することもできるのです。

心や身体で感じる最初の不快感は避けられないものの、「あの人はいつも人の悪口ばかり言っている」「上司がうまく説明してくれれば、こんなミスはしなかったのに」というように、受けたストレスについて心の中でモノローグを始めなければ、生理的な不快感は自然と軽減されます。

この記事ではまず、いつでも、どこでも、誰にでもできて、しかもほんの少しの時間で出来るストレス対処法を紹介します。周囲の人に気づかれることなく実践するうちに、不快な気持ちを楽にすることができます。続けて、ストレスを溜めない職場環境や仕事習慣を作るアイディアとその効果などを、私自身の体験を交えてお話しします。少し長めの記事なので、時間のない方は目次を参照して、興味のある所だけでも読んでみてください。


1分間のストレス対処法:STOP

苛立ち、焦り、怒り、悲しみ、不安など不快感や動揺を感じた時、このシンプルな対処法を実践することで落ち着きを取り戻し、リフレッシュして仕事を再開することができます。STOPという名称は、4つのステップを表す英単語の頭文字をつなげたものです。覚えやすいので、ストレスを感じたらすぐトライしてみてください。


S: Stop(ストップ)

まず、今していること(タイピング、書類整理、商品チェック等)を休止して、身体の動きを止めます。お客さんに応対している、上司と会話している、一刻を争って急いでいるなどの場合は、どうしてもやるべきことだけ終わらせて、静止します。

T: Take a deep breath(深呼吸する)

息を深くお腹まで吸い込んで吐きます。ショックが大きかったり感情がたかぶっている時は、鼻から深く息を吸って口から吐いてみてください。落ち着くまで数回深呼吸してもいいでしょう。

O: Observe & Open(自分の内面を観察して意識を広げる)

自分の身体と心の中で起こっていること(考え、感情、身体の感覚)を見つめます。

例:
考え
:締め切りに間に合わないだろう
感情:焦り、恐れ
身体の感覚:胸をギュッとつかまれたよう

価値判断や意見を交えずに、自分の内面で起こっていることをありのまま認め、優しく受け入れます。

新しい考え(上司に叱られるだろう、もっと早く始めればよかった、など)を加えて思考と感情のさらなる深みにはまらないために、感情が引き起こしている身体の感覚(胸をつかまれたよう)に意識を集中させます。

好奇心と優しさを持って身体の感覚を観察し続けると、それが少しづつ変化して軽くなっていくのに気づくでしょう。打ち寄せた波が引いていくように、押し寄せた不快感が少しづつ遠のいていくのです。

それから意識を周囲の光景や音、匂いなどへ広げると「今味わっている不快感は、この瞬間に起こっていることのほんの一部にしか過ぎない」と気づくでしょう。

P: Proceed(新たな一歩を踏み出す)

気持ちの昂りが治まってきたら、今自分に何が必要か問いかけて、次の行動を決めます。ストレスを受けて自動反射的に行動したり、思考や感情にがんじがらめになるのではなく、一旦停止して落ち着くことで、その時に最適な選択肢(上司に相談して締め切りを伸ばしてもらう、など)を取って前に進むことができるのです。


4つのステップを完了するのにかなり時間がかかりそう、と思われるかもしれませんが、実際そうではありません。この対処法に慣れるため、職場ストレスの有無に関わらず毎日練習することをお勧めします。「満員電車で押されてムッときた」「店員の対応が気に入らない」など、STOPを練習する機会はたくさんあるでしょう。練習を重ねるほど、STOPの実践が習慣になります。

職場ストレスにSTOPを試した効果について、コメントを頂けたら嬉しいです。またこのストレス対処法について質問がありましたら、同様にコメント欄へお寄せください。

上記STOP法の説明は、米国マサチューセッツ大学医学部名誉教授のジョン・カバットジン博士が開発したマインドフルネス ストレス低減法コースに含まれているものを、私自身や私の生徒、クライアントの体験をもとに少し改良したものです。STOPは世界中で多くの人によって実践され、その効果が認められています。私も日常生活にSTOPを取り入れることで、ストレスとうまくつき合っています。

ストレスを溜めない職場環境と習慣づくり

STOPを取り入れるだけでもストレス度はかなり下がりますが、ストレスが起きにくい環境やストレスを溜めない習慣を作ると、さらに効果的です。以下に、私自身のストレス対策に大いに役立ったことをお話しします。

毎日ストレスチェックする

気づかぬうちにストレスを溜めてしまわないよう、毎日自分のストレスレベルをチェックする時間を設けましょう。じっと静止して、自分の身体と心の中を覗きます。もしストレス度が高いと気づいたら、その場でSTOPを実践します。ただゆっくりと深呼吸をしたり、足の裏に触れる床や地面を感じながら一歩一歩意識的に歩くことも、気持ちを落ち着かせるに役立ちます。

チェック時間の例

職場に着いた後:仕事を始める前にストレスレベルをチェックすることで、自分がその日にどんなセルフケアを必要としているのか(少し苛立っているから休憩時間を早く取ろう、不安を感じている問題について上司に相談しよう、など)わかります。

お手洗いへ行く時:焦って早足になっていたり、気分的に落ち込んで足を引きずっていたり、眉根にシワを寄せていませんか? 

休憩時間:同僚とお喋りするもいいですが、ほんの少しの時間をストレスチェックに費やしてみてはいかがでしょう?

帰りの通勤電車の中:スマホをしまって1日を振り返り、自分のストレスレベルをチェックしてみましょう。

(ひっそりと)マイ・ティータイムを楽しむ

忙しくて休憩時間が取れない時は、ラベンダーやカモミールなど、リラックス効果のあるハーブティーを仕事の友にしてみませんか? 気になっていることをすべて脇に置いて、カップから立ち昇る湯気、心地よい香りや色合いを楽しんだら、お茶を一服。口から喉へ流れていく味や温度、食感を満喫します。心の中で「あー」と感嘆の声をあげるかもしれません。まとまったティータイムが取れなくても、お茶を飲む行為に集中することで、その一瞬一瞬を至福の時にすることができます。

外の空気に触れる

もし職場が室内なら、何かと口実をつけて外に出る機会を増やしましょう。お手洗いの後でちょっとビルから出たり、外でする用事を率先して行なうなどして、自然の空気を肌で感じ、空を見上げます。大空の下では自分を悩ませているものが小さく感じられ、職場で起きる不快なことは「流れゆく雲のようにいつか去っていく」ことが実感できるでしょう。

マルチタスクを避ける

レポートを書きながらメールチェック、食事をしながらスマホいじり、歩きながらポッドキャスト聴き......「ながら作業」は私たち多くの生活習慣となっていますが、マルチタスクはストレス要因となり得ます。一つのタスクに集中し、それを完了してから次のタスクに取り組みましょう。勤務中に使うコンピューターの新着メール通知をオフにしたり、スマホを機内モードに設定することをお勧めします。

何もしないひとときをつくる

長時間タイピングをして指がこわばったり、スクリーンを見続けた後目が疲れるように、考え続けることもストレスになります。仕事中に思考から解放される時間を取ることをお勧めします。

じっとして呼吸に意識を向け、何か考えていることに気づいたらそれを認めて、また意識を呼吸に戻します。目を軽く閉じてもいいし、木や空が見える窓の近くにいる場合は、自然の景色を見ながら呼吸を意識しても構いません。「ぼうっとしている暇などない!」と思うかもしれませんが、忙しい時だからこそ、1分でもいいので何もしない時間を過ごしてみてください。それがどれほど心と身体をリフレッシュして、仕事の効率を上げてくれるかに気づくでしょう。

気持ちを和らげてくれるものに囲まれる

恋人や家族、ペットの写真、自分の趣味に関連するもの、ミニ観葉植物など、気持ちをリラックスさせてくれるものを仕事空間に加えてみましょう。私のクライアントの一人は、時折深呼吸することを思い出せるよう、Breatheと書いてデスクの上に置いていました。

(誰にも知られず)リラクゼーション・エクササイズ

退屈な会議中や客待ちをしている時などには、身体をリラックスさせるエクササイズをこっそり行うことができます。

深い息を鼻から吸うと同時に両足の爪先をギュッと丸め、ゆっくり鼻から息を吐きつつ爪先を完全にゆるめます。同じように息を吸いながら両手の拳を握り締め、息を吐きながら拳を開きます。時間があれば足の爪先から始めて、脚、お尻、お腹、胸、肩、腕、手と、順番に各部位を緊張、リラックスさせていきます。席を立つ頃にはリフレッシュして、次の仕事へ向かうことができるでしょう。

アメリカの市自治体に勤務した私のストレス対策成功談

15年間自分のビジネスを楽しんだ後夫に先立たれた私は、当時大学に通っていた息子の学費を賄うため、テキサス州都オースティン市が運営する文化センターで、フルタイム勤務を始めました。アメリカだから日本の企業勤めよりずっと自由でストレスも少ないだろう、と思っていたのは大間違い。公共機関にありがちな古い体質はオースティンでも同じでした。何をやるにしてもマニュアル遵守な所が私の性格と合わず、大きなストレスとなっていました。

東京の旅行会社で勤務していた時にもストレスはありましたが、休憩時間に近くを散歩したり、外食を楽しんだり、同僚とお喋りをすることが、良い気分転換となっていました。ところがオースティンの文化センターでは、ランチ休憩がたった30分。しかも休憩時間の始めと終わりをタイムカードに記録する、という徹底管理ぶり! 30分では食事をして歯を磨くのが精一杯、しかも午後の休憩時間などありません。ストレスが溜まって身体に影響をきたしても退職するわけにいかず、何とかしなければ、というギリギリの状態でした。

そんな時、出会ったのがSTOPです。何の道具も要らず、いつでもどこでも実践できるこの1分間のストレス対処法を職場に取り入れ、さらには前述の「ストレスを溜めない職場環境と習慣」を作ったおかげで、私は無事息子の大学卒業まで、文化センター勤務を続けることができました。もしあなたが同じように職場ストレスに悩んでいるなら、是非この記事で読んだことを試してみてください。

おわりに

STOPは「今この瞬間に起こっていることを、判断を交えずありのまま認めて受け入れる」という、マインドフルネスの実践に基づいています。マインドフルネスについてもっと知りたい方は、私のホームページをご覧ださい。

私は現在、世界中で6500人が修了した6週間の無料オンラインマインドフルネスストレス低減法プログラムを、日本語に翻訳するプロジェクトに取り組んでいます。日本語版が完成次第(今年末予定)アクセス情報をNOTEでお知らせしますので、興味のある方はアカウントフォローしてください。職場ストレスに悩む人が一人でも少なくなりますように!


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