私なりのミステリーの楽しみ方 『雲をつかむ死』
ポアロシリーズ10作目『雲をつかむ死』
飛行機の中で行われた事件ということもあり、どうしても飛行機の中で読み始めたかった。離陸し、ワクワクしながら読み進めるも前半はポアロが全面に出るわけでもなくどちらかと言えば影が薄めな印象を受けた。
前作の『三幕の殺人』ほどではないが,せっかく現場に居合わせたというのに肝心なことは何も見ていないというなんとも格好のつかない始まりなのだ。
ただ、10作以上読んでいると違和感に少しずつ気づけるようになるもので、今回私はとあるポアロの言動から犯人がわかった。あまり熱心に推理しながら読む方ではないが、犯人が誰かわかった上で読み進めるとまた違った面白さがある。
特に今回の作品はミスリードが上手いなという印象だ。
何がどう伏線になっているか、初見で完全に気づける人はいないんじゃないかと思う。ミステリーや謎解きには共通した違和感があって、その違和感をどう扱うかがこの手のコンテンツの楽しみ方の違いなんだろうなと思う。
真の探偵になりたいのであればそのあたりの違和感は絶対に無視できない。実際あとから振り返るとなぜ気づけなかったんだろうと思う場面も多々あった。けれど、コナンでいう毛利探偵のような立ち位置で楽しむのであればしっかり騙されたほうが面白い。
今回私は意図せず気づいてしまったが、本来はしっかり騙されたいのでどんなにミステリー慣れしても、鈍感なまま読み進めていこうと思う。
もちろん犯人を推理することに重きを置く楽しみもあっていいと思うので、これはあくまで私の場合という話だ。