介護認定調査員の涙
庭のコスモスを誰かが折っていく・・とか、家に誰かが入って来ていたずらする・・という被害妄想が母に現れ、病院で認知症と診断されたのは二年前。
その後に初めての介護認定の調査を受けました。
その日、初めに私が一人で調査員の方と話をして、その後に母も一緒に話したあと母の部屋に移動。
ベッドの乗り降りや手足の上げ下げなどをして、身体的な機能の確認をしました。
認定あるあるで、母はいつもよりしっかりとした受け答えをし、手足の動きも普段以上にキレがよく、とても80代には見えない動き。
私は内心、「こりゃ、要介護にはならないかな。」と思いました。
それでも母を部屋に残して、調査員の方と私が別の部屋で話をしていると、もうさっきのことは忘れてやって来て、調査員の方に初めましての対応。
そんなこんなの認定調査が終わった後、その調査員の方と話をした時のことです。
これからいったい母はどうなっていくのか、とても不安な気持ちであれこれ聞く私に、その方はひとつひとつ丁寧に答えてくれました。
私の母の被害妄想は【家族以外の誰か】に対してでしたが、【家族や、そばで一生懸命お世話をしている人】に対してというのはよくあるらしい。
その方は「実はうちの母も認知症で、私に対しての被害妄想だったんですよ。○○さんはご自分に対してじゃなくてよかったですね!」と慰めてくれました。
そこで話を終わらせようとしたその調査員の方に、私は思わず「今はどうなさっているのですか?」と聞いてしまいました。
その後に施設に入られたそうですが、施設に入ってからも最後まで会ってもらえず、そのまま亡くなってしまったそうなのです。
最初からずっと毅然とした態度で淡々と調査を行っていた方が、最後に流した涙を私は忘れられません。