牛乳瓶の蓋
母は認知症になる以前から宅配の牛乳をとっていて、今も変わらず一日一本の牛乳を飲んでいます。
1年ほど前、宅配のお姉さんから「牛乳瓶の蓋は捨てずにそのまま返してください。」とお願いされました。
たった今のことを忘れてしまう母の頭の中のバケツは、もういっぱいで何も入りません。何年も捨ててきた蓋を今さら「捨てないでね。」と言っても、覚えていられるはずがありません。
そう思っていました。
初めの何日かは案の定蓋を捨てているので、その度に私が目の前で「捨てちゃだめだよ。」とゴミ箱から拾い上げていました。
ところが数日経つと、ほぼ毎日捨てずにとっておくようになったのです。
これだけ聞くと、そんなことくらい・・・と思うかもしれませんが、私にとっては大きな驚きでした。
認知症になったらどんどん忘れていって、もう新しいことは何も覚えられない・・と思い込んでいたのですから。
介護をする上での、ほんの小さな希望の光が見えた気がしました。
そうは言っても、たった今その牛乳を飲んだことは忘れてしまう母なのですが。。。