あの空が忘れられない
古宇利島の空は、
この目に映した景色の中でナンバーワンかな。
都会の喧騒を忘れて、
ただ眺めているだけで幸せを感じられた。
少なくとも、私の心は満たされた。
古宇利島を訪れたカップルは、
末永く幸せでいられるらしい。
ハートの形をした岩や、アダムとイヴの伝説は、
この地を訪れるカップルの胸を高鳴らせるだろう。
私は、あの島で過ごすことを楽しみにしていた。
あの旅の、メインイベントだった。
あの空が忘れられない。
さっきまでキャッチボールしてた海辺の広場、
もうすっかり薄暗くなってる。
びっくりするほど、涼しくなってきた。
深くなっていく青。
そう、青い夜の予感が、胸を奮わせる。
さっきの夕焼けも良かったけど、忘れよう。
オレンジが青へ変わっていくのは止められない。
このバルコニーからの景色が、一番相応しい。
私たちの旅に、相応しい。
あの空が忘れられない。
この旅で終わりにしようと言ったあなた。
あなたの目に、あの空はどう映ったのさ。
何を思っていたのさ。
あの旅を再スタートにするつもりだった私。
あなたを振り向かせたかった私は、
ただ、あの空を、眺めていた。
やはり、もう、止められないだろう。
いや、まだ、終わっちゃいない。
でも、輝かしい陽は燃えて沈んで、
冷たい色が、あの日の、何かの、終わりを告げた。
あの空を、素直に愛せない。
あの空が、忘れられない。