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『色彩を持たない』を読みました

月曜日、後輩の女の子が休職しました。
水曜日、51歳になる先輩が早退しました。
でも私は、澄んだ空気を久しぶりに吸ったように
背筋を伸ばして家まで帰りました。
自分自身を美しいと思いました。
もっと美しく磨かれたいと思いました。帰り道の公園では、目的を持たないで過ごしたい、でもまだ知らない私についての好奇心と、それに興味を持つべきだと感じました。

単に昨日食べたよもぎぱんが美味しかったからかも知れませんが、つくる君の巡礼の年を読み終え柔らかい毛布に全身包まれた感じになりました。やる気も食欲もないけれど、自分ひとりで静かにここに居る時間が快適だと思いました。初めて、自室の天井と壁にくまなく貼られているクロスに気が付きました。実際に薄い膜に包まれているのだと少し息苦しく、少しほっとしました。

火曜日、鼠が家の近くで亡くなっていました。
下校中の中学生らが大袈裟に騒いで、まもなく理科の先生がやってきて、小さい亡骸はその場所から別の何処へ移りました。
私は東京の美術展を思い出し、ヒトがやってはいけないこと、そしてそれを見てはいけないことがあると知りました。小さな死について、取るに足らないことだと思った自分がいたから。(そう言い聞かせて身を守ったとも言えるけれど)
階段を登りながら、これからどうしたって受け入れてはいけない事もあるし、たとえ結果的に実際に受け入れる形になっていたとしても、それを決して心で受容してはいけないのだと思いました。

また、私の大事なガラス製の耳飾りは、言葉で言い表わせないほど大切なものになりました。
つくる君が36歳だとしても、上手なつくり話だとしても、彼の機械式時計の音と同じくらいの美しさが、記憶がそこに込められて消えないだろうと気付きました。

思い出だけで10年は生きていける。

『色彩を持たない』の本は、ただただ優しいお話でシンプル。今の自分が読めて良かった。
心にふわーっと広がりができたような、且つ、
目の前の現実を見据えたいと、正しく見据えていきたいと思いました。
パン屋を襲撃するお話だけではないのですね。

今朝つけた香水の匂いが微かにベッドに残っていて、わたし本日もちゃんと1日働いてきたのだと、やっと今更、受け入れるようになりました。

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