文明開化の音が聴こえぬ
カンタン酢やつけて味噌のチューブなどは味が完成されていて、もはや工業製品だ。
先日純粋な米酢で胡瓜の和え物を作ったら、理科の実験で誤って飲んだ酢酸の味がした。
これが正しいはずだ。
つまり自分は、酢酸からカンタン酢が作られる過程を味わいたかったのだ。小さな台所から生まれるはずだった無数の可能性あるいは奇跡の取り合い。それを企業の研究者に、その特権を奪われた心地だ。今この瞬間も、地道で正確な調合と再現性のある数値、そして均質な実験室からさえも漏れ出る歓喜。彼らの苦しみさえ感じる