建築物を見て歩く❼大阪中之島美術館
2022年2月に完成した大阪中之島美術館に行きました。
堂島川と土佐堀川に挟まれた中洲にある中之島。
東西3km、南北は最大で500mの細長いエリアに中之島美術館はあります。
シンプルで存在感のある外観が目を引きます。
国内外の美術館を沢山見て歩きましたが、黒一色で仕上げた建物は見たことがなかったように思います。
黒い外壁を考える
ここ数年、自宅の外壁を黒一色にしたいと言う人が増えてきました。
長い間、外壁は白もしくはベージュやグレー系の明るい色合いが主流でした。
白い外壁は汚れやカビなど経年劣化が目立ちます。
メンテナンスに手がかかるからと、白い外壁色の採用を躊躇する人が増えてきたことも黒を選択する一因かもしれません。
ただ白から黒への振り幅は大きく、その傾向はメンテナンスも含めた複合的な要因があると考えています。
散歩をしながら築浅住宅の外壁を観察すると、白と薄いグレーやグレーと黒など2色使いが目につきます。
外壁の色にも最新の流行や傾向が見えてきます。
一方、黒い外観が抱える課題の1つに街並みとの調和があります。
特に防犯上の理由で道路側に窓を設置しないプランでは、家は一塊の大きな黒い箱です。
圧迫感と威圧感があると言われても仕方ないと感じます。
黒は、使い方しだいではスタイリッシュで品格のある外観を演出することができます。
その例の1つが、今回ご紹介する中之島美術館です。
中之島美術館の黒いキューブは圧倒的なインパクトがあります。
街並みからそれほど浮くこともなく、むしろ景観の一部になっています。
巨大な箱にも関わらず、圧迫感や威圧感は感じられません。
遠くから眺めるとまるで浮遊しているかのように見えます。
浮遊感が、色の持つ重さを軽減していると感じました。
中之島美術館のコンセプト
この建物の基本テーマは「パッサージュ(passage)」フランス語で通路・小径という意味です。
日曜美術館で紹介された時にはそのコンセプトと建物がつながりませんでした。
ずいぶん難しい解釈だと感じました。
設計を担当した遠藤克彦は、美術館の核となる場所を「パッサージュ」として計画しています。
私が訪れた日は、丁度休館日でした。
4階と5階の展示室はクローズしていましたが、1階と2階は誰でも自由に見学をすることが可能です。
人の気配がない静かな空間を心おきなく撮影することができました。
無料で開放されている屋内空間を通り抜け、長いエスカレーターで上る先に展示室があります。
気負うことなく、散歩のついでにアートに触れることができる
パッサージュは、そのために存在する通路だと理解しました。
カンディハウスの家具
美術館に置かれている家具は、すべて中之島美術館のためにデザインされ、日本の家具メーカーであるカンディハウスで製作されたものです。
カンディハウスは北海道旭川市にある家具メーカーです。
国内外の有名なデザイナーとコラボし、国内だけでなく海外にも日本の家具の素晴らしさを発信し続けています。
上質な木の特性を活かしたシンプルで飽きのこないデザインに
ほんのひと匙加えられた遊び心が、家具に奥行きを与えています。
パッサージュに並ぶ、ベンチやチェアは、これ以上望めないぐらいこの空間に合っています。
黒とナチュラルな木肌色の組み合わせは私も好きな配色の1つです。
大阪市の要望
中之島美術館は構想から実現まで30年以上の長い時間をかけた「美の器」です。
美術館を喩えるに相応しい美しい表現だと思います。
最後に大阪市が打ち立てたコンセプトをご紹介します。
「さまざまな人と活動が交差する都市のような美術館」
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