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空のかたちをもとめる。「NiNa ~ニナ・ヒールドと空飛ぶ箒~」

 好きな作品の更新があるとテンションあがるよね、ということで、今月紹介する作品はこちら、「NiNa ~ニナ・ヒールドと空飛ぶ箒~」。
 魔法もののファンタジーかつ学園もので、王道な題材を取り扱っているようで、王道すぎない作品かなと。


あらすじ


 エルダー・シングス魔術学院、薬学部二年生のニナ・ヒールドは悩んでいた。

 ひょんなことから、全校生徒の憧れの的である四年生の先輩に飛行箒競技『スカイ・クラッド』の代表選手としてスカウトされてしまったからだ。

 なにをどうして劣等生の自分が選ばれたのか皆目検討がつかない。
 けれど、彼女にとって誰かに強く必要とされることは、初めての経験だった。

 それは昔々の話。
 といっても、せいぜい十年くらい前の話だ。

           --作者さまあらすじより


レビュー


 まずはやっぱり、この世界観・設定が独特ですきです。魔法を使い、箒に乗って空を飛び、魔法学校に通う、というところはよくあるファンタジーものの設定と同じなのだけれど、「魔法」の概念がすこしSFっぽさもある気がしていて、その絶妙さがたまらない。本文から引用すると、

  助走にともなって箒体(きたい)がわずかに浮かび上がり、走るわたしのお尻に食い込んでくる。
 篝火(かがりび)がはじけるような、ぱちぱちという音を耳が拾う。反射鉱石と大気中の粒子(S.U.R.P.)のこすれあう音だ。

 魔女が使う箒の刷毛の内側には、こぶし大の鉱石が仕込まれている。
 わたしたちが反射鉱石(リフレクション・クリスタル)と呼ぶこの鉱石は、空気中に漂う目に見えない小さな粒子にこすりつけることで反発する性質を持つ。けれど、助走による加速だけでは人間の身体を浮き上がらせるほどの反発力を生み出すことはできない。
 粒子の濃い波を見つけて、それに勢いをつけて飛び乗ることで初めて、わたしたちは自分の体重を浮き上がらせる上昇力を得ることができるのだ。
         ーー2:《文具屋》のニナ(2)より

  こんな感じで、さらっと読むだけでもなんとなく雰囲気が伝わるかなと。箒で空を飛ぶのも、ただ飛ぶだけじゃないのがかっこいいし、語句もいちいちかっこいいし、とにかく面白いです。

 そして、ニナは上記の引用にもあるスカイ・クラッドという競技の代表選手となりますが、このスカイ・クラッドの疾走感がたまらなく好き。文章という媒体の性質上、動画よりも臨場感は伝わりにくいものだと思うのですが、そんなことを全く感じさせないこれはなんなんですか!
 スカイ・クラッドとは、魔女が箒で空を飛びながら魔法を打ちあうというとてもアクロバティックな競技。箒で空を翔るだけでも十分スリリングなのに、さらに魔法を打つなんて危険に決まってる。けれど、その恐怖を上回るような爽快さがあって、読んでいてすごく楽しいです。ニナはあんまり箒で飛ぶのが得意じゃないので、特にお話の前半で余計ひやっとしながら読むことになりますが、それだけ一緒に空を駆け抜けているような気分になれるのってすごいなと思う。

 あとやっぱり、ニナの頑張ってる姿を読むのがすごい好きです。
 この作品の主人公であるニナは、座学はそれなりにできても実技が苦手で、箒に乗るのも上手くできない、いわゆる劣等生だけれど、彼女にもひとつすごい才能があるんですね。そんな才能を見初められて代表選手にスカウトされるわけですが、箒にもきちんと乗れず、理力の扱いも満足にできない彼女がスカイ・クラッドで活躍するためにはとてつもない力が必要なわけです。
 学校で周りについていけるように、落ちこぼれないように、と思って努力しているのにどうにも上手くいかなくて、自分の軸となるものもきちんと持てないでいるけれど、誰かに必要とされてそれに応えるため、必死にもがく彼女の姿が本当にすてきだし、私も何も持っていないかもしれないけれど頑張ろうと思える。そういうところが好きです。


 その他、ニナだけじゃなく先輩方もかっこよくて良いですし、なによりわたしはニナの親友のアリソンが好きです。アリソンが主人公のお話、「aLisoN 〜アリソン・C・シュリュズベリーの受難〜」もカクヨムに掲載されているので、アリソンやこの作品を気に入った方はぜひ!


基本情報

NiNa ~ニナ・ヒールドと空飛ぶ箒~ 著:逢坂 新
連載中長編小説
文字数: 126,768字 (2021/9/30 小説家になろうにて)
掲載サイト:
小説家になろう
カクヨム
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