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「エマニュエル・サーガ」に前を向く勇気をもらう【おすすめweb小説#2】

 「エマニュエル・サーガ」通称ESは、更新のたびに気が狂いそうになるほど好きなお話です。この作品に出会ったのは4年前ですが、そのときからずーっと夢中になって追いかけ続けています。
 side:A、side:Bの2つの方向から楽しめる作品で「それって面倒じゃない?」と思う人もいるかもしれませんが、そんなことを感じさせないくらい面白くて濃密。文字数も多いけれど続きが気になりすぎてすぐに読めちゃいますし、もちろんside:A、side:Bの片方だけを読むのもOKです。この2つの物語が絡み合っていくさまも面白さの1つなので、個人的には片方に手を出せば、結局両方読むことになると思いますけど……。

あらすじ

side:A
 黄暦335年、腐敗したトラモント黄皇国に世直しを掲げ革命軍が立ち上がった。彼らの名は救世軍。かつて黄金の国と呼ばれ栄華を極めた大国は、たちまち混乱の渦中へと落ちていく。
 ちょうどその頃、行方不明の兄を探して黄皇国を旅していたカミラは、ひょんなことから官軍と救世軍の戦いに巻き込まれることになった。一方大将軍たる父に憧れて仕官した少年ジェロディは、忠誠を奉じるべき国が既に腐敗しきっていることを知り、過酷な選択を迫られる。
 本来出会うはずのなかった二人。しかしその二人の道が交わるとき、ついに時代が動き始めた。
 人間、魔物、竜、獣人、そして神――様々な思惑が交錯する群像ファンタジー。
             作者さまあらすじより

side:B
 黄暦335年、腐敗したトラモント黄皇国に世直しを掲げ革命軍が立ち上がった。彼らの名は救世軍。かつて黄金の国と呼ばれ栄華を極めた大国は、たちまち混乱の渦中へと落ちていく。
 その騒乱が激しさを増す少し前。傭兵の青年エリクはひょんなことからシャムシール砂王国の王子に目をつけられて投獄された。何とか智恵を絞って脱出を図るも、今度は砂王国が黄皇国へ侵攻しようとしていることを知ってしまい、危険を知らせるべく走り出す。
 そこで出会った国境の常勝将軍ガルテリオとの出会いが運命を狂わせ始めた。エリクは黄皇国の動乱に巻き込まれ、やがて歴史の表舞台へと上がってゆく。
 人間、魔物、竜、獣人、そして神──様々な思惑が交錯する群像ファンタジー。
             作者さまあらすじより

レビュー

 まず、ESのどこが好きかって設定の緻密さ。細部まで練りあげられた世界観がとても頼もしくて重厚で、エマニュエルの世界がすぐそこにあるような気持ちにさせてくれます。文字を追いかけているだけで「その世界のにおいがしてくる」くらいリアリティーのある作品。
 さらに、そのたくさんの設定が自然な流れで説明されていて、気がつかない間に設定を分かってしまえるところがすごい。本格ファンタジーの一番難しいところって、いかに著者の世界を読者と共有できるか、にあると思うんですが、それがとてつもなく上手い。設定の量は多いけれど辟易することはなく、むしろ楽しめるし良いアクセントになっているというか。本格ファンタジーが好きな方はもちろん、あんまりファンタジーを読まない方でもすぐにこの世界に引きこまれると思います。
 めちゃくちゃ美味しそうな飯テロ回とかもあって、わたしはとにかくこのエマニュエルの世界に行きたいんだ……!

 そんなしっかりとした土台のうえで、いきいきと動くキャラクターたちもすごく好き。群像劇・群像ファンタジーの作品なので、たっくさんの人物が登場するわけですが、その全員に人生・ドラマがしっかりとあって、本当に「生きて」いて。彼らが会話したりなんだりしているのを読んでるだけでも楽しくなれます。
 しかも、これまた全員が個性たっぷりで、好きになれちゃうような人々だから困る(いい意味で)。もはやみんな好き!なくらいですがわたしの最推しはside:Aの主人公でもあるカミラです。もう好きすぎて、わたしには彼女の魅力は言葉に表せない!! 困ってる人を見ると迷わず助けちゃうところも、顔面は美少女なのに中身がすこし残念なところも、男勝りなところも、でも家事はかんぺきなところも、全部がかっこかわいくてすき……。カミラになりたい、とは思わないけれど、親友にいてほしいなって思えるタイプの女の子です。もうなんか、ただただ本当に好きだな……太陽みたいにあかるくて、隣にいてくれたらほっとするような子。
 カミラ以外のキャラクターも彼女と同じくらい魅力的なので、ESを読めばきっとあなたの推しが見つかる! と思います。プラス、そんな彼らの織りなす人間関係も必読ものなので、関係性が好きな方にもどうぞ!

 そして、なによりも折れない主人公たちが好きです。どこまでネタバレしていいかわからないのでぼかしますが、このESは戦記物でもあるので、勝てるわけないでしょ、みたいなときもたくさんありますし、重要な人物が死んでしまうこともあります。ほんっとに、今でも思いだしても辛くて悲しくなるくらいの人が死ぬ。それ以外でもシリアスな場面がたくさんあります。でも、この作品を読み続けてしまうのは、光と救いがあるからで、希望を信じさせてくれるからだと思う。
 彼らはそんな高すぎる壁に何度も遭遇して、何度も落ち込んで、迷って、悩むけれど、いつでもそれをのりこえてくれる。どんな逆風が吹いていても進みつづける彼らは「え、わたし何に悩んでたの?」って自分が馬鹿らしくなるくらい、すごくかっこいいんですよね。大義のために絶対にあきらめない彼らの姿を見ると、どんなにへこんでいても、わたしも頑張らないとなって前を向く勇気をくれるような気がする。というか前を向かされます。
 現実は小説ほど上手くはいかないかもしれないけれど、思っているより悪くないかもしれないし、世界は美しいのかもしれない、と思わせてくれるような、そんな作品だと思います。

 あとは伏線がびっちり仕込まれてて後からあっと驚けるような展開もたくさんあって、何度読んでも面白い・読めば読むほど面白い、するめのような作品です(笑)
 とにかく素敵でめちゃくちゃ面白いのでたくさんの人に読んでほしい! 後悔しないから!!


 ただ、ESは本当に長い作品ではあるので、エマニュエルの世界を少しのぞいてみたいって方には、同世界観の
子連れ竜人のエマニュエル探訪記
「宣教師トビアスの日記」
から読んでみるのもおすすめです。「宣教師トビアスの日記」の方は完結していて、そこまで長くないのである程度手を出しやすいかな?
 また、この作品の作者である長谷川さんは第8回ネット小説大賞を受賞されていて、その受賞作でもある書籍化予定の「死神の絵の具」も激面白くてすきなので読んでください!(笑) こっちは人間ドラマ・現代ファンタジー・お仕事小説です。


基本情報

【side:A】エマニュエル・サーガ―黄昏の国と救世軍―
エマニュエル・サーガ―黄昏の国と救世軍―【side:B】
著:長谷川
連載中長編小説
文字数:2,235,961字(side:A)
   668,094字(side:B)
小説リンク
小説家になろう(side:A)
小説家になろう(side:B)



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