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「無重力メリーゴーラウンド」と夜空に飛び出して【おすすめweb小説#5】

 これまでとは少し雰囲気を変えて、少女小説っぽい作品を紹介してみます。このお話もまたすごい好きなんだな……。
(諸事情により当初の予定「作品に出会った順に紹介する」を変えていますが、気まぐれのようなものなのでお気になさらず)


あらすじ

スマホもネットもまだまだ先の、とある時代のあの国のあの街みたいな「クレセント・シティ」。ギャングのはびこる摩天楼の街で大活躍のスーパーヒーロー「パンサー」は、主人公ニコルの同級生。目立ちまくりで顔バレのヒーローは、当然モテモテ。一方ニコルは、芸人一家のピエロ担当。男の子に相手にされない日々を送るも、イベントに呼ばれた資産家の家で、聞いてはいけない悪巧みを聞いてしまったため、どんどん巻き込まれていく羽目に。しかも「パンサー」の秘密まで知ってしまった!?

恋と友情とアクションいっぱいの、青春グラフィティ。
             作者さまあらすじより


レビュー

 まずこのノリと雰囲気が大好きすぎて……。作者さまのサイトにも「海外ヤング・アダルト風」と書かれているのですが、まさにその通り! 私は海外YAを読んで育ってきた人間で、小学校時代の後半なんて特にYAしか読んでいなかったくらいなのですが、そんな私にこの雰囲気は懐かしすぎました。
 普通の女の子がささいなことから大事件に巻き込まれて、友達や家族を救うために奮闘する、というストーリーラインはもちろん、空気感みたいなのが好き。主人公のニコルが割と明るくてめげないタイプで、そんな彼女の視点でカラッと物語が進んでいくので軽い気持ちでざくざく読めます。展開としては重たい部分もあるけれど、ジェットコースター級に進んでいくのでそれどころじゃない。
 あとは海外のハイスクールぽさもすてき。実際に海外の高校に通ったことはないので実情は知りませんが、海外ドラマや小説でイメージしていた姿そのままが描かれていてテンションあがっちゃいます。主人公ニコルの親友である「ウィリアム・ジャズウィット」がWJと呼ばれているところとか、スクールカーストなところとか。スーパーヒーローというとアメコミらしさもありますし、そういう細かいポイントが楽しいなーと思う。

 そして、冒頭にもあるように少女小説ぽい作品なのですが、その理由は恋愛要素の多さにあります。数だけでいえば少女漫画並みにある気がする(わたしは少女漫画をあんまり読まないので正確な例えではないかもしれませんが)。
 ニコルはスーパーヒーローの「パンサー」と、まぁいろいろあるんですが(ネタバレ防止のため明言はしません)、このパンサーの行動がいちいちずるいので! 本当に! 主人公のニコルに感情移入しながら読んでいるとすごくやきもきするし、急に爆弾発言もされるし、情緒がついてけなくて心臓が持たない。笑 けれど、外側から見ているとこの主人公カップルがかわいくて、逆に読みすすめちゃう……という感じで、恋愛面がふんだんに盛り込まれています。
 ただ、この作品は恋愛だけが主軸じゃないところが良くって、事件に巻き込まれたり、謎を追ったり、ギャングに追われたり……ニコルやその周りの人々が、家族や友達に幸せになってほしくて頑張ってるシーンがたくさんあるんですよね。だから「恋愛主体の話はあんまり……」という人にも割と抵抗なく読めると思う。甘さもたくさんありつつ、それ以外の要素も盛り盛りです。

 あとは、登場人物全員が憎めないキャラなのが好き。物語として、悪役キャラというものも存在するんですが、私には彼をどうも憎みきれなかった……何なら少し感情移入してしまうくらい。
 他の登場人物たちも人間なので聖人君子ではなくて、全員ちょっとした短所は存在するんですが、そういう人間らしさ含めてまるっと愛せてしまうような、そんな描き方が出来るのが単純にすごいと思う。割と軽めに話が進んでいくなかで、そういうやわらかな部分があるのが素敵ですし、悪役をただ非難するだけでないお話はこちらもどこか救われるような気がする。
 あとは単純に登場人物みんなが可愛い。本当に可愛い……彼らと一緒になって冒険しているつもりになれるだけでもわくわくしますし、全力でみんなのことを応援したくなる。わたしもこういう経験してみたかったなー! 

 他にも語りつくせないほどの魅力のある作品ですが、そのあたりは読んで実感していただきたいな。読みはじめたら止まらない、そんな疾走感にあふれるお話なので、体感としてはあっという間に読めてしまうと思います。

 また、ニコルの娘ジーンが主人公となる続編「無重力ジェリービーンズ」も同じサイトにて連載されていますので、「無重力メリーゴーラウンド」が気に入った方には、そちらもおすすめです。


基本情報

無重力メリーゴーラウンド 著:大江ラベル
完結済長編小説
小説リンク:
個人サイト「Warehouse Novels」

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