「真夜中のサイレン」
ふきこぼれる寸前で火を止める
真夜中のミルクは 妙に甘くなる
口中に拡がるその甘さにじっと
聞き耳を立てていると、やがて
ソプラノ・リコーダーの音が 遠くからやって来る
笛吹の名前を尋ねるわけでもなく、いや、
果たしてそいつが名を
持つものなのかどうかも知らないが、知りはしないが、
わたしは
近づいてくるその音に、耳を澄ます
徐々に近づいてくるその音はいつか
二重、三重に厚みを帯びて
それが四重奏に変わるその時
旋律の直中を サイレン音が横切る
月も星もない、ただ掌でくるめ