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母と兄が統合失調症の家庭で育ちました

 母の統合失調症が確定して気持ちを整理していた。実は筆者の3つ上の兄も13歳頃に統合失調症(当時は精神分裂病)と診断されていたのだ。

 その後精神科に入退院を繰り返した後、28歳の時に自死している。

 母と兄の言動はほぼ同じだったが決定的に異なる点は、兄は妄想の末に自責の念に駆られる。母は他人のせいにして攻撃的になる。

 ちなみに父は妄想の症状は全くなく、筆者と同様に家庭内では2人の言動に否定的だった。


オカルト好きの兄

 兄が妄想に囚われていると思われる初期のエピソードは小学生の頃に「宇宙人に攫われて体内に機械を埋め込まれた」と大騒ぎすることがあった。当時テレビはオカルトブームでUFOだ心霊だとゴールデンタイムには必ず放送されていた。

 母はそんな兄を笑いながらも深く悩む姿を見て病院に連れて行き、レントゲンを撮ったり脳波をとったりした。当然そんなことは起こるわけがないので最終的に精神科の受診を勧められたようだ。

 統合失調症あるあるだと思うが、オカルト話や陰謀論など根も葉もない作り話は1から10まで信じ込むのに科学的な説明はまるで聞こうとしない。筆者もSF創作が好きな方ではあるが現実的に起こりうるかそうでないかを深く調べて答えを出さないと気が済まない。

 そんな兄の趣味嗜好は多彩でゲームアニメを中心に広く興味を持って接していたため、その点においては筆者もかなり影響を受けた。しかし思春期とともに兄の心は日に日に壊れていく。


隣人に怯える母と兄

 2人の妄想が本格的になり始めたのは「階下の住人が意図的に騒音を出したり、電磁波攻撃をしてきている」ということからだった。母ですら初期は否定的であったにも関わらず徐々に兄の世界に染まるように同じ発言をするようになっていった。

 当時筆者は高校生で同居していたが近隣が騒がしいことは一度もなく、毎日繰り広げられる2人の妄想劇場に疲弊していた。変化があったことを母に伝える兄、母は1分1秒何が起こったかをノートにビッシリと記録していた。

 オカルト的な妄想から隣人の嫌がらせ、そして次に組織的な集団ストーカーに狙われていると遷移していく。

 不幸中の幸いだったのは本当に他者に危害を加えたり、家庭内暴力はなかったということだろうか。それでも常に母のヒステリーの中で存在を否定する言葉を浴びせられた続けたのはあまりにも大きなダメージではあるが。


筆者も母の子

 父の血が強いのか筆者には強い妄想はないが、残念ながら母の特性も引き継いでしまっている。20代は血の気が多く被害妄想に近いことで誰かを傷付けてしまったことがある。今思い返せばそれは母の言動にそっくりだったと思う。今そんな気持ちが湧くことはなくなったが、人に裏切られた時はやはり人一倍怒りに囚われてしまう。

 病気だ妄想だと言っても結局のところ嫌な現実に対する逃避反応、自分の過ちを正当化するための攻撃反応としてそういう思考プロセスに陥り、それが常態化することで幻聴や幻覚に囚われて急性状態になる。その強度は人によって異なるし、母と兄の場合は先天的な影響が強いように感じる。

 彼らの話を否定してはいけないのは十二分にわかっているが、どんな理由でも他者の尊厳を踏みにじることはあってはいけない。

 統合失調症は100人に1人発症すると言われ、統合失調症でなかったとしても加齢によって被害妄想が強くなったり陰謀論を信じてしまったりするようになる。自分を客観視する習慣を作ったり、反省したり人に優しくしたり、空や花が綺麗だと思ったりすることでもいいと思う。そういう生活を続けていけばきっと最悪の事態は避けられるだろう。

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