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雨色ティーカップ
「こんな日は、朝早くに窓を開けるのが好きよ」
雨の日、早朝目を覚すと、1階の窓辺近くの小さいテーブルで
祖母はよく紅茶を飲んでいた
祖母は身綺麗なおしゃれな人で
整えられた短い白髪をアップスタイルにし
唇には薄いピンクの口紅をつけていた
「庭の木にね、しとしとと雨粒が滴って、音がするの
遠くで鳥のさえずりが聞こえて、なんだかとっても素敵なのよ」
わたしは店の奥の棚から、祖母の「とっておき」の紅茶を取り出した
青い花びらが混ぜられた紅茶は、蓋を開けただけで爽やかな香りがする
沸騰直後の熱いお湯を注ぎ、少しの間蒸らす
「あら、珍しいティーカップね」
こちらも「とっておき」のティーカップを差し出すと
常連客の老婦人が目を輝かせていた
「ええ、雨の日はこちらをお出しすると決めているんです」
婦人は納得したように頷いて、ゆっくり静かに紅茶をティーカップに注ぐ
やや青みがかった不思議な色の紅茶は、雨音を楽しむように少し揺れた
「“草木もね、ずっと日光に当たると枯れてしまうでしょ
それと一緒でね、レディーには気品のある休息が必要なのよ“」
「祖母がよく言っていた言葉です」
わたしが一言添えると、婦人はふふふと笑って紅茶を一口飲んだ
どうやら静かな雨は、しばらく止みそうにないようであった
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こやまさおり