驚き、桃の木、ロマネスコ
いつも新参者には余所余所しい態度をとってしまいます。臆病なだけなのですが、避けているように見えるかもしれません。
それは、お姑さんの友人が送ってくれた、野菜の詰め合わせの中に入っていました。カブや大根に紛れて、一際存在感を放つ“それ”
お姑さんは決まりきったものしか作りませんから、それを料理するのは、自動的に私の役目です。
でも、私はずっとそれを避けて、放置していました。
変わった食べ物が好きな私にしては珍しく、
「よそものと関わりたくないな」
そんな気持ちで、見なかったふりをして、私はそれを冷蔵庫に押し込めました。
そして、その存在もすっかり忘れたある日。
「牛乳を買いすぎちゃったから、料理で使って」と夫に頼まれ、クリームパスタを作ろうとしたときのこと。
具は鶏肉にしめじ、あと何か青いものが欲しいなと冷蔵庫を漁っていると、それが目につきました。そろそろ年貢の納め時か。
私は、ついに冷蔵庫からそれを取り出しました。
その名はロマネスコ。
地中海原産の野菜で、ロマネスコとは「ローマの」という意味。珊瑚のような形の花蕾は、規則正しい螺旋を描き、世界一美しい野菜とも呼ばていれるそうです。
料理を仕事にしているのに、恥ずかしながらロマネスコを手にするのはこれが初めて。ロマネスコもアーティチョークもエシャロットも、おしゃれ野菜とは縁遠い私です。
ロマネスコの幾何学的な形に、思わずじっと見入ってしまいます。自然の美しさは、実に奥深いです。
気付いたときには、今までの塩対応はなんだったの?というくらいのベタ惚れ。
ロマネスコ、こんなの初めて♡
てな具合で大興奮です。
まずは茹でて
ブロッコリーを茹でるのと同じ要領で、小房に分け、ため水で洗い、茹でていきます。
小房に分けたロマネスコの可愛らしいことと言ったら。ミニチュアの木のようです。茹でると緑色が濃くなってきれいです。
パスタdeロマネスコ
茹でたロマネスコはサラダにして、残りはパスタソースの具材にします。
パスタソースは時間がなかったので適当に。
鶏肉と玉ねぎ、しめじ、そしてロマネスコを炒めて、薄力粉をまぶします。
牛乳を少しづつ加え、塩胡椒、コンソメで味をととのえ、軽いとろみをつければ完成。
ロマネスコ、おまえもか
ロマネスコを初めて食べる昼ごはんです。
初めて見るロマネスコに最初こそビビっていた夫ですが、一口食べて「なんだ、ブロッコリーじゃん」と、予想通りの雑な感想をいただきました。
確かに風味はブロッコリーに近いです。
でも、この外見の美しさは何者にも勝る特徴ではないでしょうか。
うーん、なんて素敵なんだロマネスコ!
また食べたいな、いくらくらいするのかな、と思いネットで調べてみると、まさかの一株1,000円超え!でした。(※個体差にもよります)
ロマネスコ、おまえもか。
世界の物価高騰は、世界一美しい野菜も勝てないようです。今度ロマネスコ様とお会いできるのはいつになることやら。
ロマネスコは、その値段も美しさも、驚きの野菜なのでした。