大地の揺れが教えてくれたこと
お盆のUターンラッシュの
人混みに埋もれながら
わたしは、足早に、特急あずさに乗り込む
あー、間に合った!
でも、時間ギリギリで席がとれず
通路に立っていた
走り出した列車、
突然、携帯のブザーが鳴り響く
「地震だ!!!」
車内は、不安と焦りでいっぱいだった
車掌さんは、車内を慌ただしく駆け巡り
全員がスマホを見て
何が起きたのか確認していた
震度6弱というニュースが、飛び込み
しばらく、電車は動かないというアナウンスが鳴り響いた
みんな地べたに座り込み
スマホを見たり、本を読んでいた
わたしは
車内の空調が寒くて
小さくまるくうずくまっていた
すると
「ちょっと、寒いですよね、空調を少しあげてもらいましょうか」
ひとりの若者が、声をかけてくれた
「あ、はい。お願いします 、」
愕然と通路に座り込んでいた4人は、
ぽつりぽつりと、それぞれに話はじめた。
「地震こわいですよね、みなさん、どこへいかれるんですか」
ー「嫁が里帰りしてて、、家族に会いに長野まで行きます」
ー「姉ちゃんの家族に、会いにいくんです」
ー「友だちとこのあと、あそぶんです」
各々に、お盆の休暇を楽しみにしながら
この列車に乗ったのだろう。
気づけば、車内は、土砂降りから晴天に変わったような優しくあたたかい空気に包まれていた
最初に声をかけてくれた22才の若者の話、
東京に上京してきたときのこと
仕事が楽しくて、上司もみんないい人
海外が好きで、これから、こんなことをしたい、とワクワクした表情で語ってくれた。
一番はじめに降りたのは、わたし。
小淵沢駅のアナウンスが鳴り、
「がんばってください、僕らもおんなじくらい、あなたの夢を応援しています!」
笑顔があふれた
ここを去るのが、ちょっと
名残惜しいくらいに。
もう二度と、彼らとは会うことはないだろう、
もし、地震がこなければ
こんなにも、人との出会いに
胸が震える瞬間を味わうことはできなかったかもしれない
大地の揺れは、
人のあたたかさを教えてくれたのだ
彼らに、胸をはっていきられる
わたしでいられるよう、
明日からも、精一杯生きようと思った
ありがとう、さようなら
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