禅の道(76)弁道平穏
弁道とは何か
仏法において「弁道(べんどう)」という言葉があります。これは、道を論じ、道を弁えるという意味を持ち、修行者が正しい生き方や真理に基づいた道を理解し、実践することを指します。しかし、この「弁道」という言葉は、単なる知識の習得や論理の追求ではなく、日常生活を通じて体得される深い智慧を含んでいます。
では、「弁道」が具体的に何を意味し、私たちの人生にどのような平穏をもたらすのでしょうか。ここでは「弁道」を掘り下げ、その意義と、それを通じて得られる「弁道の平穏」について考えてみたいと思います。
弁道の本質:正しい道を弁える
「弁道」という言葉の「弁」には、「論じる」「分別する」という意味がありますが、仏教ではこれをさらに深く、「真理に基づいて見極める」という解釈をします。すなわち、物事をただ表面的に分別するのではなく、仏法の教えを基盤にした根本的な理解が求められます。
例えば、日常生活で私たちは様々な選択を迫られます。その中で「弁道」の姿勢を持つとは、自分の欲望や感情に流されるのではなく、周囲との調和や真理に基づいた選択をすることです。
弁道とは、「この道が本当に自分や他者にとって善きものであるか」を問うていくこと。そしてそれを実践する中で、自分自身を深く見つめ直し、真実の道を見極める力を養うことなのです。
弁道の平穏:日常に根ざした智慧
「弁道」を実践することで得られるものは、「平穏」です。この平穏は、単なる静けさや安定ではなく、自らの内側から湧き出る深い安心感です。
弁道を通じて、人は次第に物事に対する執着や恐れを手放していきます。そして、自分の行動や選択に対して後悔や迷いが少なくなることで、心の平穏を得ることができるのです。
例えば、忙しい現代社会において、私たちは常に時間や成果に追われています。その中で「弁道」を実践することは、目先の利益ではなく、長期的な視野に立った選択をする力を養います。これにより、周囲に振り回されることなく、心に平穏を保ちながら日々を生きることができるのです。
弁道の祈り:平穏への願い
「弁道」を日々の実践に取り入れることは、祈りに似た行為です。それは、仏法に基づいて自身の道を清め、他者の幸福と調和を願うことでもあります。
ここで、「弁道の平穏」を願う簡単な祈りを紹介します。
この祈りは、単なる言葉ではなく、日々の行動を通じて表現されるべきものです。私たちが心を込めて一つ一つの選択をすること、それが弁道の実践であり、祈りそのものなのです。
日常で弁道を生きる
「弁道」と聞くと、仏道に専心する修行者だけが行うものだと思われるかもしれません。しかし、弁道はすべての人が実践できる日常的な道でもあります。
例えば、家族や職場の人間関係の中で、相手を思いやる選択をすること。買い物をするときに本当に必要なものだけを選ぶこと。これらも「弁道」の一部です。
一歩一歩、弁道を歩むことで、私たちの人生はより平穏で豊かなものになります。どうぞ、今日から「弁道」の祈りを胸に、あなたの道を歩んでみてください。
「弁道」とは、私たち自身の心の中にある智慧とつながり、それを日常に生かしていくこと。それは決して難しいことではなく、静かに自分を見つめ、正しい道を選び取る姿勢を持つことから始まります。そしてその先には、深い平穏と喜びが待っています。
平穏な一日を。
ご覧いただき有難うございます。
念水庵 正道