禅の道(79)よく噛んで食べる意義
唾液について思う
昨夕、三か月に一度の歯の検査と掃除のため、歯科医院を訪れました。待合室で時間を過ごしていると、壁に貼られた唾液に関する興味深い記事に目が留まりました。その記事には、唾液が一日に1―1.5リットルも分泌されるという驚きの情報が書かれていました。そして、唾液が持つ多彩な役割についても説明されており、その中には殺菌作用やガンの発生を抑える効能も含まれていました。
これを読んで、私は改めて「よく噛んで食べること」の大切さに思い至りました。唾液が適切に分泌されるためには、食事中にしっかり噛むことが不可欠です。ただ、それだけではなく、このことは日々の生活における「聞く姿勢」にも通じるのではないかと感じました。
話を噛みしめる
食べ物を噛みしめるように、人の話を「噛みしめる」必要があります。ただ表面的に話を聞くのではなく、その意図や背景を咀嚼し、その人がどのように考え、何を伝えようとしているのかを理解しようとする姿勢が重要です。これには、先入観を持たず、心をまっさらな状態にして耳を傾けることが求められます。
私たちの口腔内を清潔に保つように、心の中も清らかであるべきです。話を聞く際には、自己の判断や偏見をできるだけ排除し、相手の言葉を純粋に受け入れることを心がけたいものです。そうすることで、相手の思いや価値観をより深く理解し、豊かな対話が生まれるでしょう。
禅的な気づき
禅の教えにおいても、「今この瞬間」に集中することが重要視されています。食事において一口一口を大切にするように、会話においても一言一言を大事にし、相手の話に心を尽くして向き合うことが、禅の実践につながるのではないでしょうか。
唾液という一見些細に思える存在から、私は食べることや聞くことの意味を深く考える機会を得ました。それは健康だけでなく、心の在り方にも関わるものです。これからも、よく噛み、よく聞くことを意識しながら、禅の道を歩んでいきたいと思います。
人の念いを嚙みしめる
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念水庵 正道