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新しいトレンドを考える|隠居2.0?

妄想の範囲ではあるが「隠居したい」と思うことが増えてきた。会社員として組織に属し、デジタル機器に囲まれ続け、あっという間に過ぎていく毎日を振り返ると、喧騒から距離を置いて暮らした方がいいんじゃないかと思ってしまうのだ。

隠居するのならば、田舎で空き家を買い取ってDIYで改修をしたい。世間との繋がりはほとんどをインターネットで済ませ、noteを書いたりBloombergを読む程度とする。

とはいえ、食品の調達など買い物は地元のスーパーに出向き、酒屋で地酒を買い込んでおく。そして時々は大型書店や古書店に行って本を買い込み、緩やかに流れる時間のなかで読書に耽る生活を送るのだ。

「退屈なのでは?」とか「孤独死してしまうのでは?」と言われてしまいそうだけれど、普段は「忙しい」と愚痴をこぼし「人間関係がストレス」と嘆いているのだから、結局のところどっちもどっちなのではないか。

「隠居」と聞いて思い出す作家がいる。『ライ麦畑でつかまえて』のJ.D.サリンジャーだ。

村上春樹訳も有名で、こちらの方が現代は認知がされているかもしれない。

『ライ麦畑でつかまえて』の成功で静かに暮らせなくなったサリンジャーは隠遁生活を送ったとされている。実際は地元コミュニティに溶け込んでいたとは言うが、地元民もサリンジャーの私生活には踏み込まなかったという。

おそらく、プライバシーを守って静かに暮らしたかったんじゃないかと思う。また、創作活動は続けていたようだから、喧騒を離れることが創造力を掻き立ててくれたのかもしれない。

こういった「隠居生活」をもう少し多くの人が実践する時代が来たらいいのに、と思ってしまう。人は孤独を恐れる傾向にあるので、少数派になるのは必至だろうけど、一定数こういう暮らしを望む人たちはいるんじゃないか。

ここ数年で新しい価値観の生活様式は増えてきたと思っている。「ミニマリスト」「デジタルノマド」「シェアリングエコノミー」「フリーランス・ギグエコノミー」などなど、今までの価値観とは違う生活様式を実践している人たちだ。

だから、これからは「隠居2.0」とか「隠居×ミニマリスト」みたいな、新しい価値観が生まれてもそんなにおかしくはないと思う。

空き家が社会問題であるならば、その空き家を隠居する家にDIYで蘇らせた時点で社会課題を解決していることにもなるし、物を大切にせざるを得ない質素な暮らしだから、現代の過剰消費社会にも一石を投じることができる。

もちろん、サリンジャーは『ライ麦畑でつかまえて』の印税で一生隠居できる金のなる木を手にしていたため、実際に隠居することができたのだろう。この本はなんと6000万部以上売れているのだ。

だから今の僕は隠居を妄想で留めているのが実情である。空き家をネットで探してみて妄想を膨らませるが、仕事を辞めるまでの決断などできやしない。

ただ、他力本願にはなってしまうけれど、隠居ムーブメントが来た時にはそのビッグウェーブに乗れるようにしたい。騒がしい世の中から距離を置いて静かに暮らすことは、本当に価値がある時間を過ごせると想像している。

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