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食べ放題から距離を置く|無制限には気を付けよう
10年以上前に胃の摘出手術をしてからというもの、「食べ放題」から疎遠になってしまった。普通に注文したものさえ食べ切れないことが多いのだから当たり前だ。
一定の金額さえ払えば、欲望のままに際限なく食べる事ができるのは幸せだ。中学生の頃に生まれて初めて焼肉食べ放題に行った時の幸福感は今も覚えている。
しかし、こうして食事量が減った今、「食べ放題」から距離を置いてみると、新たに見えてくるものが結構ある。
職場の同僚に大食いの青年がいる。彼は「食べ放題じゃないと元が取れない」と言い、食べ放題をこよなく愛しているようだ。
確かに、せっかく外食に出かけて美味しいものを食べようという時に、食後に物足りなさを感じてしまうのは寂しい。しかし追加注文をすると、支払いは高く付く。だったらやっぱり食べ放題は魅力的なシステムだ。
しかし、その大食いの青年は、絵にかいたような巨漢であり、日頃から痩せようと努力をしている。
そして彼には恋人がいて、結婚することを本気で考えているらしい。結婚はまだ少し先の話になるらしいが、ウェディングフォトの前撮りをしようという話にはなっているらしい。しかし、彼は「痩せてから撮ろう」と言い続け、先延ばしにしてしまっているそうだ。
そんな彼は、いつも職場から2つ先の駅まで歩いて帰っており、ジムにも通っているらしい。本当に痩せたいと思っているわけだ。
だが、ジムは会員制なので毎月一定額の費用が発生する。そして24時間利用制限なしだ。
なんだかこれを見ていると、食べ放題で元を取るようにたくさん食べたカロリーを、使い放題の会員制ジムで消化し、レストランにもフィットネスジムにも代金を吸い取られているように見えてくる。
欲望をエンジンにした資本主義社会において「制限なし」を掲げることで、企業は際限なく消費者のニーズに応え続けることができるのだ。思えば、ここ10年くらいでオンライン化とサブスクの文化が定着し、音楽も動画もほとんどが「聞き放題」「見放題」になっている。一度経験すると、もう元に戻るのは難しいのは、多くの人が経験済みのことだろう。
そう考えると、少食である僕は少なくとも飲食においては「制限あり」の状態でいられるので、自分を守ることができているのだと思った。人間は弱い生き物なので、適度な制限も必要なのだと思う。巨漢の彼と話しながら、そんなことを考えていた。
ちなみに、この話を本人にそのまま伝えたところ「ほんまにそうっすね(笑)」と自分の行動を振り返って笑いに変えていた。
僕の様に変な角度で世の中を見るより、このくらい素直な方が幸せなのかもしれない。