黒い飲み物ばかり飲む
先日、仕事で課された資料作成が納期直前だったことにより、休む暇もなく終電を過ぎるまで猛烈に作業を続けていた日があります。
本来は休憩を適度に挟んで生産性を保ちたいところなのですが、追い込まれた環境下ではなかなか休む気になれず、一日中手を動かし続けることになってしまいました。
その日はコーヒーを飲んでから出社し、昼前後には小休憩を挟んでもう一杯コーヒーを買って飲みながら作業をし、夕方を過ぎて頭がまわらなくなってきたころには、炭酸で脳をスッキリさせようとコーラを飲んで作業のラストスパートに取り掛かります。
そんな一日が終わり退勤をしたあと、ふと「今日は黒い飲み物ばかり飲んでいる」と気づきました。コーヒーのブラックにコカ・コーラです。
そこでせっかくだから(?)ということで、作業を頑張ったご褒美として黒ビールを飲んで一日を終えることにしました。これにて朝から晩まで黒い飲み物ばかり飲んだことになります。
もし昔の人たちがこの食生活を見たらギョッとしたのではないかと思います。「未来の人類は何やら黒い飲み物ばかり飲んでいる」と。
例えば、日本で初めてコーヒーを飲んだ人物は「太田南畝」(おおたなんぽ)という人です。
コーヒーが日本で初めて飲まれたのは鎖国時の長崎県出島だと言われています。当時鎖国政策が敷かれていた日本でも、長崎県の出島ではオランダとのみ海外貿易が行われていました。
オランダは17世紀半ばには全世界の植民地にコーヒーを移植させて伝播してきた歴史があり、そういった背景のなか日本の出島でオランダ人がコーヒーを伝えたのです。
そこで当時長崎奉行所に赴任していた太田南畝が、「カウヒイ」(コーヒー)を飲んだとされているのです。「焦げ臭くて味ふるに堪ず」という、あまり好意的ではない感想が書かれているようです。
確かに、子供の頃に初めてコーヒーを飲んだ時には、苦さしか感じることができずに何が美味しいのか理解できなかった記憶があります。大人がみんな美味しそうに飲んでいるところを見ているからこそ、自分が大人になるにつれてコーヒーを少しずつ好きになっていったのです。
スターバックスもコメダ珈琲もなかった時代に、真っ黒な飲み物を飲むことはおそらく相当な勇気が必要であり、その後コーヒーの魅力に気づいていくには長い期間がかかったに違いありません。
そんな黒い飲み物であるコーヒーですが、今では誰もが当たり前のように飲んでいる飲み物で、一日に何杯も飲む人も多くいるほどです。
それに至るまでの歴史には当時のオランダ人のコーヒー伝播だけでなく、コーヒー豆を栽培する現地の労働者から、カフェを日常になくてはならないものにまで浸透させた企業努力まで、様々な人々の働く歴史がぎっしりと詰まっています。
これらの歴史を全身で受け止めながら、また明日からも黒い飲み物を飲みながら頑張って働こうかと思います。
もちろん、休日の朝に飲むコーヒーの方が美味しいですが。