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オーガニック給食は市民を幸せにするのか
品川区が学校の給食に使われる野菜を、化学肥料などを一切用いないオーガニック野菜のみにするとして、波紋を呼んでいる。
波紋を呼んでいるのはホリエモンが「税金の無駄遣い」と断じて批判したことでSNS上で話題が沸騰したことによる。
どうやら農林水産省が「みどりの食料システム戦略」という施策をしており、自治体が有機農業を推進する地域として認定されると補助金が貰えるらしい。そして品川区は近隣に有機野菜を仕入れる市場もあるようで、そういった流れでこのオーガニック給食が始まった模様だ。
品川区民がオーガニック思考が高いというわけではなく、狙いや環境があっての決定であることは知っておきたい。
ただ、個人的にはオーガニック化をあまり良い施策だと思えていない。食べるものは人の身体をつくる。だからこそ有機野菜を取り入れるのかもしれないが、食べるものは人の身体だけでなく思想や人間関係にも強い影響を与えるからだ。
僕はその昔、胃の手術をした時にほとんど食事を摂らない生活をしており、食事ができるようになっても肉や魚ではない質素な食事ばかりしていた経験があった。
その時はもちろん友人と食事に行くこともなく、ひとりで食事を摂って療養をしていた。しかし時々は食事に出かける機会もあり、そういう時は自分だけがあまり食べずに友人が食事をするところを眺めるようになる。
場所がファミレスならば自分はスープとドリンクだけ頼んで、友人はハンバーグからデザートまでを堪能している。居酒屋ならば自分だけ烏龍茶をちびちびと飲み続け、友人たちはビールやサワーを飲みながら唐揚げやポテトを食べ続けている。
こういう状況にあると、周りの人が何だか野蛮に見えてくるもので「何でそんなに身体に悪そうなものを食べてるんだ?」という感覚に陥る。そうすると友人たちとは感覚がずれてくるので、当時の僕は友達がどんどん減っていってしまったのだ。
食事にはこういった社会的な側面があるので、品川区の子供たちがオーガニック給食を食べ続けていたら、他の市区町村の子供たちと感覚がずれていってしまうんじゃないかというのが僕の懸念なのだ。品川区だけが大都会であるにも関わらず、食生活のカルチャーが排他的なムラ社会になってしまったら悲しいことだ。
とはいえ、人の食生活は給食だけではない。朝ごはんは自宅で食べるだろうし、夕飯も自宅で食べたり外食をすることもあるだろう。
だから、オーガニック志向が高い品川区民は、この機会を充分に享受して健康的でクリーンな食生活を堪能していただきたいが「友達がたくさん欲しい。広い世界を楽しみたい。」という外向的な子供たちは、学校帰りにマクドナルドに寄ってジャンクフードを食べたり、友達と一緒に大人数で焼肉食べ放題に出かけたりしてバランスを取った暮らしをしてもらいたい。
健康的な食生活は大切なことだが、人生で大切なことは健康だけではなく、人はひとりでは生きていけない。