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充実した福利厚生と過重労働のバランス

僕は20代の頃に就職したばかりの会社を病気に罹って辞めてしまい、社会人になっていきなり、会社の福利厚生と国の公的保険のお世話になった経験がある。新入社員研修は受けたが現場で仕事をしたことはなく、利益を上げていないにもかかわらず恩恵を受けてしまったのである。

これは非常に辛い出来事ではあったが、福利厚生の有難みを痛感した経験ではあった。休職中も退職後も一定の期間は傷病手当金が支給されていたのだ。

また、病気が胃がんであったため手術をして胃を全摘出した。手術代は高額療養費制度を利用すると一定額以上は国が負担してくれる。更には、当時住んでいた地域はがんに対する助成金を出してくれている珍しい取り組みをしていたので、抗がん剤治療の費用も自治体が負担してくれたのである。

このように、日本の公的保険の手厚さはかなりのものである。かつてこれらをまとめたこともあるので、もしよければ参考にしてみてほしい(1年以上前に書いたので、最新情報は必ず別途調査するように)

病気や怪我で失業してしまう不安を抱えていると、人は安心して仕事に取り組むことができない。病気になった途端に一文無しになると思うと、目の前の仕事も手に付かなくなってしまうだろう。

それに対して、これら日本の公的保険制度は(これらが少子高齢化社会のなかで持続的な制度であるかはわからないが)労働者に対して、しっかりと安心を担保してくれているように思える。

しかし、こんなにも健康に対する安心感を抱ける社会だからといって、日本の会社員というのは、あまりにも働き過ぎなんではないかと思うことがある。

少し前のデータだが、諸外国と比較しても日本人の労働時間が長いことは明らかだ。このデータは週の労働時間だが、毎月45時間以上の残業をしている社員というのも、未だにたくさんいることは明らかだろう。

出典 :令和元年版過労死等防止対策白書(本文)|労働時間やメンタルヘルス対策等の状況 第1-20 図 諸外国における「週労働時間が49時間以上の者」の割合(平成30年)|厚生労働省

厚生労働省のホームページなどを調べてみると、長時間労働は疲労が蓄積され、脳や心臓疾患との関連性が高まるという医学的知見が得られている。

具体的には、残業または休日出勤の時間が月45時間を超えると健康被害のリスクが高まり、月100時間超もしくは2~6か月平均で80時間を超えると、健康被害のリスクはより高くなると指摘されている。

これってなんだかおかしいと思わないだろうか?

公的保険が手厚い日本において、日本人は国際比較でも長時間労働をして体調を崩している。

いつ病気になっても治療ができるという安心感を持ち、積極的に長時間の労働を続けた結果、体調を壊してしまう。そして手厚い公的保険を利用して治療をしたあと、再び長時間労働の現場に舞い戻っていくのだ。

そしてこれら公的保険の財源は会社員の給与からの天引きであり、そのサイクルのなかで会社員たちは毎日企業戦士として闘い続けている。

活き活きと仕事に取り組むために、安心感というのは確かに重要なものとなるはずだ。だが、それを当たり前だと思ってはならないし、公的保険の医療費はできることなら不測の事態である病気や怪我に充てたいものだろう。

長時間労働の様な防ぐことができるものは、そもそも体調を崩すまえに改善できるように取り組みたいものである。

本来は凄い制度である手厚い福利厚生も、それが当たり前に感じてしまっていることが問題なのだと思う。

福利厚生を受給した経験があるからこそ思うが、これは貴重な手当てであり、恩を返したいと思えるほどのものなのだ。

最近の僕もハードワークが続いているため、自戒を込めてここに書くが、できることなら長時間労働による体調不良などで福利厚生を利用しない社会が好ましいんじゃないか。

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