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自己投資や自己啓発のパラドックス
休職した職場の後輩が復帰することになり、話す機会があった。どうやらメンタルがよろしくないようで、その後も悩み続け本を読んだりして過ごしているらしい。
主に自己啓発本を読んでいるらしく、何だか余計心配になってしまった。別に自己啓発本を読んだっていいんだが、普段本はあまり読まないと言っていたので、悩んでいる時に見かけた自己啓発本が救いに見えたのかもしれない。良い自己啓発本をチョイスしてくれていることを願うばかりだ。
さて、僕個人はほとんど自己啓発本は読まない。他に読む本があり過ぎて自己啓発本を読んでいる暇がなく、そもそもあまり関心を持てないのだ。
近年、「自己投資」や「自己啓発」という言葉があちこちで飛び交っている。書籍、セミナー、オンライン講座、SNS……どこを見ても、自己成長に「投資」しろと強く促される。
まぁ、わからなくもないけれど、猫も杓子も「自己啓発」「自己投資」で何だか疲れてきたのは僕だけではないと思っている。もちろん大切なことではあるのだけれど。
一般的には、自己投資は自分自身の成長に欠かせない重要な一歩だとされているだろう。確かに、新たな知識やスキルを得ることは大事だ。
しかし、その投資は往々にして抽象的で、リターンが目に見えにくいのが実情だ。たとえば、自己啓発本は「これを読めば人生が変わる」と派手な宣伝をするが、結局は一時的なやる気の向上に留まることが多い。
もし、お金や時間を自分に投資するなら、何に投資するのが本当に実りがあるのだろうか。その答えは、必ずしも内面の磨きだけに限定されるわけではないと思う。
たとえば、自己投資に回すはずだったお金をあえて株式投資に使ってみるとしよう。
株式投資にはリスクが伴うが、実際に自分の資金を動かすことで、企業の業績や経済の動きをリアルに学ぶことができる。身銭を切ることで、人はようやく必死になるものだ。
企業の動向、市場のざわめき、経済指標……これらは、ただ本を読むだけでは得られない「生きた知識」として体得できる。そして、実際に利益を手にすれば、その経験は次の投資へのヒントとなり、さらなる成長へとつながる。
つまり、どんな投資も結局は「他者とのかかわり」の中で実を結ぶ。自己投資や自己啓発の真髄は、ひとりで内面を磨くだけでなく、外の世界や他者との交流の中で得る実践的な学びにこそある。
株式投資の例でも、投資先の企業という「他者」との関係が新たな発見や学びをもたらし、その結果が自分自身へのリターンとなってくる。
現代社会は自己啓発のキャッチフレーズで溢れているけれど、本当の成長は一人で完結するものではなくて、むしろ他者とのやりとりやリアルな経験から得る学びこそが、本当の「自己投資」になる。
どんな投資を選ぼうとも、その効果はやがて自分自身に、そして他者との豊かなつながりとして返ってくる。「情けは人の為ならず」という言葉の通りだと思う。
自己啓発本や自己投資を煽る記事に惑わされるのではなく、地に足をつけて人との繋がりを大切にしながら生きることをおすすめする。