傾聴も共感もいらないプロ達
先日、元メジャーリーガーで日米世界最多安打記録を持つイチローさんと、世界最多本塁打記録を持つ王貞治監督が対談をしていました。
記事では、王監督率いるホークスとイチローさんが日本プロ野球で対戦した時に、1回表から敬遠されたことについてのエピソードが書かれています。
この対談はテレビでも放映していたため全編にわたって観ることができたのですが、世界の頂点に立つプロふたりの会話というのは、一般的な常識とはだいぶかけ離れたものだと強く感じました。
個人的に印象に残ったのは、野球における打撃時の対話において、二人の見解が全く異なっていた点です。
王監督は打撃をする時に目を使って打つ、という様なことを言っていました。それに対してイチローさんは「僕は目を使わないんですよね」と回答しています。
打撃理論については高次元な会話過ぎて正直なところ理解はできていないのですが、王さんが語った意見について「わかるわかる」といった共感を一切示さずに自分の意見を即答したイチローさんの姿勢に驚きました。
現代ではよく「傾聴」や「共感」が大切だと語られます。まずは相手の言いたいことをよく聞いて、相手の立場に焦点をあててコミュニケーションを取っていく。そうすることで信頼関係が生まれていくため、自分の論理をベースに頭ごなしな意見を言っても、相手とうまくコミュニケーションをすることはできない。これが現代の考え方のように思います。
こうなった社会的な背景は多数存在すると思いますが、成長至上主義の社会のなかで傷ついてしまった人たちも多くいたことが、ひとつの要因だと思います。
そのため、「傾聴」や「共感」を重視したコミュニケーションを意識することによって、穏やかで誰もが住みよい社会が実現するのだと思います。僕もこれには基本的には同意できます。
しかし、現実の世界が厳しいことも事実です。相手に共感することばかり考えて自分の論理にブレが生じてしまうようでは、とても現代の厳しい競争社会を勝ち抜くことはできません。
イチローさんと王監督は、それこそ厳しいプロの世界でナンバーワンになった本物のプロフェッショナルです。「傾聴」や「共感」を重視した社会においても、二人はブレることなく人生を邁進しているように見えました。
どんな時代においても自分の意見を持ち続けられる、プロ意識の高い人間には強く憧れます。時代の傾向はしっかりと察知するべきですが、自分の意見を曲げてしまうようでは元も子もないかもしれません。