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働き者の元無職|ブランク期間も何のその

100名に満たない小さな会社で5~6年働いていたら、気が付けば自分が最も古株の様な存在になっていました。自分が入社当初に一緒に働いていた先輩や同僚はもうほとんどが退職してしまっています。

先日もまた後輩社員が在籍して2年程度で退職することとなり、寂しい気持ちを抱きながらも新たな門出を祝ったところです。

小さな会社は大手企業の様な給料も福利厚生も期待できず、激しい変化のなかでタフに働き続ける必要があります。合理的に考えれば、できるだけ大きな会社で働きたいと思うのが普通です。

そんな環境のなか、僕も含めてどういう社員が未だに退職せずに働いているのか考えてみたところ、ひとつの共通点を見つけました。

それは過去に無職期間を経験しているという点です。

ひとりは大学生の頃にひきこもってしまい、長い休学期間を経て7年がかりで大学を卒業し、その後にまた数年間のひきこもり経験を経てようやく20代後半で職に就いた社員です。

彼はそんな状況のなか雇ってくれた会社への感謝の気持ちが強く、未だに会社に貢献することにやりがいを見出しています。また、この会社を辞めてしまったら、またひきこもりに戻ってしまうかもしれないという気持ちもあるようです。

もうひとり女性社員で僕より長く働いている社員がいます。彼女は大学卒業後にNPO法人で1年間働いて職を離れ、詳しくは知りませんが実家で無職の1年半を過ごしていたようです。

無職の経験をしているから、仕事が忙しくても「無職よりはマシ」と思ってしまい、バリバリ働いてしまうのだそうです。

この二人の話は僕にも共感できるところがあります。かく言う僕も23歳~24歳の間は胃がんの治療とリハビリで実家での療養による無職期間を経験したからです。

忙しくしていると仕事をせずにのんびりしたいという気持ちを抱きますが、「もし仕事を辞めたら」という想像をすると、当時の無職期間の気持ちが鮮明に蘇ってきてしまいます。

仕事がない気楽な気持ちはありましたが、何よりも精神的に辛かったのは自分が社会のなかで役割を持っていないという感覚でした。

お店に行ってもテレビを観ても、店員は笑顔で接客をし、タレントは番組を盛り上げ、それぞれの役割を果たしているのが見えてきます。

店員やタレントを眺めながら、それと自分を比較して「自分は役割を果たしていない」と、どうしても思ってしまいます。すると、どんどん肩身が狭い気持ちに陥っていきます。

当時のその気持ちと、過剰な仕事を振られて忙しくしている今の状況を比べると「仕事があるのはありがたいことだな」と思ってしまうわけです。こうしてがむしゃらに働き続けて疲弊していく、何とも皮肉な結果ではあります。

人は社会的動物なので、役割を果たすことを本能的に求めているのだと思います。

一般的には、履歴書に無職のようなブランク期間がある人は、就活で不利だと思われがちですが、僕の様に無職を経験しているからこそ、粘り強く働き続ける人が一定数いることもひとつの事実です。

だから、求職者のブランク期間を見つけた企業の採用担当者は、無職期間をネガティブに捉えず「無職経験があるからよく働くかも」と捉えて採用に踏み切ってみてはいかがでしょうか。

きっと「働き者の元無職」に生まれ変わるはずです。

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