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おすすめの歌集『きみを嫌いな奴はクズだよ』木下龍也著(書肆侃々房)

人気歌人、木下龍也の第二歌集。著者は、1988年生まれでまだ若い歌人だが、雑誌『群像』の短歌投稿欄である「群像短歌部」で選者を務め、テレビ番組の「情熱大陸」で著者の歌集の制作過程が紹介されるなど、現代短歌界を代表する歌人の一人である。

著者の短歌は、短歌の基本である57577に忠実で字余りや字足らずはほとんどなく、短歌を始めたばかりの人が短歌のリズムを身につけるための教科書にもなると思う。

また、文語(古典に用いられた言葉)ではなく口語(話し言葉)で書かれているため、短歌の初心者の人でも楽しんで読めると思う。

そして、なにより短歌がとても面白い。この歌集に収められている短歌をいくつか紹介したい。

特に印象に残った7首

銀幕を膀胱破裂寸前の影が一枚ゆらゆらとゆく                 

あの虹を無視したら撃てあの虹に立ちどまったら撃つなゴジラを
                       
後藤氏が壁にGOTOと書いた日の翌朝ぼくが付け足すHEAVEN                                           
もうずっと泣いてる空を癒そうとあなたが選ぶ花柄の傘

独白もきっと会話になるだろう世界の声をすべて拾えば

「いきますか」「ええ、そろそろ」と雨粒は雲の待合室を出てゆく

吊り橋の板の欠落のように昼間のバスはなかった                    

『きみを嫌いな奴はクズだよ』木下龍也著(書肆侃々房)

一首目の短歌は、映画の途中でトイレに行く人を「膀胱破裂寸前の影」と表現したところが面白いと感じた。

四首目の「もうずっと」の短歌は、空を癒すために「花柄の傘」を選んだという発想が凄い、と思った。

まとめ

この歌集は1年以上まえに、買った歌集だがとても好きでいまだによく読んでいる。帯文は、NHK短歌にも出演しているクリープハイプの尾崎世界観が書いている。

歌集の表紙と帯文

この歌集は、1ページ1首という構成でその構成も俺は気にいっている。1つ1つの短歌をじっくり味わえるような気がするからだ。

『きみを嫌いな奴はクズだよ』。心からおすすめしたい歌集である。

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