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初実施!大学入学共通テスト「情報Ⅰ」解説速報 〜日本の情報教育の歴史が動いた日〜


はじめに

2025年の1月19日に、共通テストで「情報Ⅰ」が初実施されました。なんと30万人を超える受験生がプログラミングや統計の問題を解いたことになります。まさに「日本の情報教育の歴史が動いた日」となりました。受験生の皆さん、おつかれさまでした👏
 
実際の問題もすでに毎日新聞さんのサイトなどで公開されていますが、実社会の事例を題材にした良問が並んでいます。細かな指摘はいくつかあれど、事前に公開されていた試作問題の形式を汲んだ問題が出ており、受験生からしても想定の範囲内だったのではと思います。

「情報Ⅰ」が共通テストに入ると最初に聞いた時はどうなるものかと思いましたが、途中で頓挫することなく受験改革を実現した学校(特に情報科を担当の先生)・塾・教委・文科省他、関係者の皆さんの努力に頭が下がります。
何より関心を持って情報を学んでくれた高校生の皆さんのおかげで実現できたことです。受験生の皆さん、共通テストに至るまでの勉強期間も含めて、本当にお疲れさまでした🙇
ちなみに、来年度以降も当然続きますし、必須とする大学は国公立だけでなく私立大学にも広がっていくと思いますので、現在の高校3年生以下の方々は近い将来に受けることになる試験です(保護者の皆様もご留意を!)

どんな問題が出たの?

問題は毎日新聞さんのサイトから見ることができますので、実際に見てみてください!( 問題 ・ 解答 ・ 解説 )
今回の共通テスト「情報Ⅰ」は大問4つから成る構成でした。

第1問 情報セキュリティや情報デザインについての小問集合
第2問 A:データの活用(スーパーのシステム設計を題材に)
     B:シミュレーション(おつりの支払いを題材に)
第3問 プログラミング(部活の担当割当を題材に)
第4問 データの活用(都道府県の旅行者数を題材に)

という構成になっていました。マーク式で解答時間は60分です。
どれも具体的な事例を題材に考えていく問題で、学んでいることと目の前の社会とが繋がっている感じを、全ての教科の中で一番感じました!
ざっくりと各大問を紹介しますと・・・

第1問 情報セキュリティや情報デザインについての小問集合

第1問では今回レアだった知識系問題が2問(電子署名とIPv6)は出ましたが、そこからLED表示(デジタル時計の数字表示)を使った数学的思考を問う問題や、チェックディジットのロジックに関する問題、さらにはマウスカーソル移動に関するUI設計の問題と、いきなりバラエティがすごい!
やっぱり「情報Ⅰ」って良い教科だなと私は感激しながら解いてました。

第2問 A:データの活用(スーパーのシステム設計を題材に)

第2問のAはスーパーのシステム設計のお話。レシートのデータ活用が含まれていたため「データ活用」の領域と位置づけましたが、実際はシステム設計について考える問題なので、内容的に一番近いのは、中学校の技術でやっている「ネットワークを利⽤した双方向性のあるコンテンツのプログラミング」だと思いました。サーバー通信・データ利活用・プログラミングの3つが揃っているもんね。次は、中学校の情報教育が来ます!!

第2問 B:シミュレーション(おつりの支払いを題材に)

第2問のBはおつりの支払いを題材にしたシミュレーションの話。これはイメージしやすかったですね。頭でシミュレーションしながら表を完成していけば、わかりやすかったです。大学で飲み会の幹事を経験する前にこれを学べたことは意義がありますね。みんな千円札を用意してから行こう☺️(と思ったけど、今はみんなキャッシュレス決済世代か…)

第3問 プログラミング(部活の担当割当を題材に)

どれほどの難易度になるか一番心配されたのはプログラミングの問題でしたが、これもイメージしやすい部活の担当決めの問題でした。図で具体的に示してくれていたので「プログラムで何を成したいのか」を理解しやすかったですね。ここをすぐ把握できるかがプログラミングの問題では重要!
あとは配列の添字(インデックス)が1からだったことは要留意点でした。サンプル問題では0からだったので、本番も同じだと丸暗記してるとNGだったということで、ここでも思考力・読解力を問うてきました。

第4問 データの活用(都道府県の旅行者数を題材に)

最後は統計の問題。観光庁が実際に公開してる「旅行・観光消費動向調査」の実データを使った問題です。社会にある実データを使った分析をすることを大事にしてきた「情報Ⅰ」の強い意思を感じた問題でした。
各設問は冷静に読んで考えれば正答できる問題がほとんどでした。箱ひげ図は出るぞと言われていたらやっぱり出た感。相関も出ましたが、具体的にイメージしやすい問題でした。逆に、問3の白点の問題があまり問われることがない特殊な問題だったように思いました。
ただ、この大問4を最後に解いた方は皆さんわかると思うのですが、ここまで来ると時間との戦いが佳境!!本来は解けるはずの問題を慌てて勘違いすることが頻発する要注意ゾーンでした。私はやっちまいました😭

※より詳しい各問題の分析・解説は、ライフイズテックのカリキュラムチームのさおりんによる、こちらの記事もぜひご覧ください!

実際解いてみての4大所感

①受験生がイメージしやすい問題解決の題材
実際私も解いてみましたが、スーパーのシステム設計・おつり支払いのシミュレーション・担当決めをするプログラム作成・都道府県の訪問者数に関する統計分析など、受験生が実社会における情報活用をイメージしやすい題材ばかりで「試験勉強することが、社会勉強にもなる」という感覚を一番に持ちました。逆に言うと、それらの題材で何が起きているかをイメージできないと、チンプンカンプンになるリスクもあります。よって、授業の中でもプログラミングやデータ分析など、手を動かして具体的な問題解決体験をしておくことが重要です。

②文章量が多く、読解力や回答スピードも求められる
次に感じたのは、文章量の多さですね。60分の試験時間に対して問題用紙35ページ!!ちゃんと読まないと間違える問題ばかりの中で、60分でこれを解ききることが一番の難関。私も焦って何問か読み間違えしました😅 ただ、この特徴もサンプル問題通りではあったので、受験生には想定内かもしれません。
あとは全教科共通ですが「読解力」ですね。一定の長さの文章を瞬時に読んで理解する能力が「情報Ⅰ」でも求められています。

③知識ではなく、思考力を問う教科
問題の構成としては、知識(記憶)だけで解ける問題はほとんどなく、プログラミング的思考力など数理的な思考が求められる問題が大半を占めました。試作問題も同じ傾向だったので、これは大学入試センターとして「情報」という教科を暗記教科でなく、思考教科として位置づけていることの表れでしょう。裏を返すと、マニアック過ぎる知識問題や解き直しても意味がわからないよみたいな問題はなかったと思います。その点では、受験生の納得感は高いのではと思います。

④マーク式テストで測れない大事なものを忘れないように
最後に、これはマーク方式かつ絶対解があるテストである限り難しいのですが、情報分野における創造性(例:プログラミングで作品をつくる)や問題発見力(例:データを分析して問題を見出す)を評価できる方法ではないことには自覚的でないといけない感じています。これらの力(コンピテンシー)は今回のテストで評価できること以上に、情報教育において重視したいことです。テストで測れないそれぞれの生徒さんの強みを引き出したい!
今後、受験を起点にした授業設計が進むと、これらの要素が軽視、さらには欠落する危険があることには今後も注意が必要です。

今後に向けて

30万人がITパスポートレベルの試験を高校卒業時&浪人時に受験するということは、受験のみならず世代全体のITリテラシー向上に大きなプラスの影響が出るはずです。
もちろん受験がゴールではないわけですが、高校「情報Ⅰ」を学ぶ過程でプログラミングやデータ分析などを具体的に経験し、さらに身近な問題解決体験までしている高校生が大半を占めるようになったことって、社会にめちゃ大きなインパクトがあります。

また、高校「情報Ⅰ」を学ぶ前の中学校・小学校時点での情報教育についても見直しがかかる節目になると感じています。現行の学習指導要領における小・中のプログラミング教育の見直しはもちろん、次期学習指導要領を見据えた変化も想定しておく必要があるでしょう。
実際に今回出た問題には、小学校や中学校のプログラミング教育、さらには数学にもつながる要素が多数含まれていました。
 
そして、今年の受験生は2029年に大卒就職します。私達はそれを「2029年問題」と呼んでいるのですが、より一段と高いITリテラシーをもった世代が会社に入ってくるまでに、受入先の企業側の大人のリテラシーを高めておかないといけません。進化した情報教育を受けた若い世代に「この会社の人たち全然わかってないな〜」と思われたら、その会社の未来は…(略)

その点で、「情報Ⅰ」の問題を見て学んでおく必要があるのは、むしろ大人の我々です。大人の皆さんもぜひ今回の共通テストを解いてみてください。「今の教育進んでるなー!」とか「面白いな!」と思って頂けると思います。

生徒さんの今後の学習も見据えて、問題ごとのより詳しい解説記事も追って出していけたらと思っていますので、ご期待ください!

余談:AIに共通テスト「情報Ⅰ」を解かせてみたら

超余談ですが、AIに今年の「情報Ⅰ」を解かせたらどうなるかなと思って、ChatGPTのo1(proじゃなく)に解かせてみたところ、3問間違えで92点でした!いやぁ、優秀👏
正しく問題認識できればほぼ正解なんですが、マーク式の試験の回答方法を認識できないことが時々あるようでした。

そして、試験問題を解かせるのはあくまで余興ですが、自分で解いて間違った問題の解説を頼むと勉強が捗る!!わからない問題がそのままにならない時代になったわけで、AI時代の学習者の学力はちゃんとやってれば上がりますね。先生や家庭教師に訊かないとわからないという人的リソース問題を超えられるので。
AIの適切な使い方ができるようになる意味でも、高校「情報Ⅰ」の重要度はますます上がりますし、小・中学校での情報教育のアップデートも避けられないでしょう。AIリテラシー格差の下側に日本の子どもたちを追いやるわけにはいきませんからね!
(このへんまた別途noteに書けたらと思っています)

おまけという名の告知 (教育関係者向け)

①次は中学校の情報教育が来るぞ!

教育委員会・学校関係者の方々向けに、今回の共通テストをふまえ「今、自治体として取り組むべき中学校の情報教育を考える」という無料のオンラインセミナーを開催します。しかも、上野耕史氏(前文科省教科調査官)、鹿野利春氏(前文科省教科調査官)という、業界関係者的には大谷とイチローの特別対談的なスペシャルイベントです。
次は、中学校の情報教育が来ますので、ぜひ!!!

②共通テストの最速振り返りセミナー⇒もう次年度対策の話!

こちらは沖縄受験ゼミナールさんをお招きしての、塾関係者の方々向けのセミナーです。情報Ⅰの対策どうやったのか、今後どうやっていくのか。リアルかつ最新の情報をお聞きできるので、私も非常に気になっています!!
お申し込みはこちらから!

以上です!
今年は気合い入れて、note月1本以上書きます!(勢いで新年の決意😆)


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