さんぽ絵日記 久木神社の豆まき
だいぶ季節外れになってしまったけれど、節分の日こと。
小さい頃は父が帰ってくるのを待って豆まきをした。寒い夜空に響く父の大きな「鬼は外、福は内」の声と、闇に吸い込まれていく豆。
もちろん子どもだった私も豆はまいたけれど、どちらかというと豆まきは家長がやるもの、という感じだったので、夜に大きな声で大人が豆をまくというのが、子ども心に面白いなあと思っていたものだった。
今、うちでは子どもたちが豆をまくことが多い。イワシの頭をヒイラギに刺して魔除けにする、というのも、もうやる人はほとんどいないのでは。信仰からイベントになった感じがある節分。
そして、いつの間にか節分といえば恵方巻きになっていた。大学時代、静岡から来ていた友だちが、「節分といえば太巻きを無言でかぶりつくでしょ?」と言っていて、「なにそれー」と関東出身組で大笑いしていたのだけれど、その後恵方巻きがこんなにメジャーになるとは。
私にとって豆まきは家でする行事だったので、神社の豆まきはあまりなじみがないのだけれど、今年は久しぶりに時間があったので、一度訪れたことのある久木神社に行ってみた。
神主さんが登場したので、豆まきをするのかと思ったら、舞台からおりて待つ人たちの間を歩いて回って、みんなに手渡しで豆を渡してくれる。なんだか優しい感じでいい。
神主さんがだいたいの人に豆を渡し終わると、いよいよ豆まきが始まる。紅白幕のお立ち台から、地元の役員さんや年男、年女のひとたちが「鬼は外、福は内」と豆をまく。
まかれる「福豆」と書かれた白い三角の袋にはときどき賞品の書かれた紙がついていて、あとで交換してもらえる。商品は箱ティッシュや醤油、地元のお豆腐屋さんの商品券やグローブまであるらしい。
なので、取る人たちはだんだんエキサイト。でも、奪い合いにならないように、まくひとはいろんな方向にいて、人が密集しないように考えられている。
まいている人、訪れる人が顔見知りで、地元の人たちのあったかさ、昭和っぽい懐かしさが漂っているのがいい。
結局私は豆4袋とオロナミンCをゲット。みんなもなにかしら手にしたようで、帰り道の人はみんなにこにこしていた。
小さい頃は豆を年の数しか食べられないのが少なすぎて、親の分までちょうだいと言って食べていたものだけれど、いつの間にか私も到底年の数の豆は食べられなくなってしまった。年にひとつぶ積み重ねた時間の長さを思い知る日。
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