あの日の景色
静かな朝。窓の向こうの空は晴れ、薄い青色が広がっている。
空の下には海と客船。その手前には洋風の庭園が見える。すぐ下には銀杏並木。黄色い葉がもうほとんど散っている。
神奈川県横浜市。山下公園に臨むクラシカルなホテルの一室に私はいる。何度も訪れてはいたものの、宿泊は初めてだった。公園を走る人や、写真撮影をするカップルが見える。並木を歩く人はまばらだが、皆口元を緩めているように見えた。
今日、私はここで結婚式を挙げる。
式は午後からだ。早く始まってほしいような、でも終わってほしくないような、そわそわした気持ちだ。そして、本当に今日なのかなあ、とぼんやり考えていた。式当日とは思えないくらい寧静な時間が流れていた。
これは約1年前の、2019年12月のこと。
この日は特別な一日になった。窓から眺めた穏やかで平和な景色も、今となっては特別なものだ。私は忘れることはないだろう。