2023年落語はじめは、五街道雲助師匠の「初天神」から|初席期間の記録まとめ

初席もニ之席も過ぎ、下席も終わりを迎えようとしている段になって、ようやく今年の落語はじめのnoteです。遅い。
引き続きネットの辺境でこそこそとnoteを更新してまいりますので、気が向いたら読んでやってくださると嬉しいです。今年もどうぞよろしくお願いいたします!

2023年は年明け早々、健康上の理由で三が日の初席に行けなくなるという災難が発生(発売日にチケット頑張って取ったのにー!)。寄る年波を実感してしまったので、今年は健康に十分気をつけて、趣味とも適度な距離感でお付き合いしていきたいです。ヨボヨボ。

というわけで、寄席ではなくホール落語からのスタート。やはり大好きな雲と桃のお二人を聴かないことには、新しい年も始まりません!

雲助三三二人会

古今亭松ぼっくり 子ほめ
五街道雲助 初天神
柳家三三  五貫裁き
〜仲入り
柳家三三  道具や
五街道雲助 幾代餅

20230104
日本橋社会教育会館

三三師匠と白酒師匠はよく会をやってらっしゃいますが、雲助師匠とはあまりお見かけしないなと思ったら、三三師匠いわく「生まれて初めて」の二人会だったそう。

こういう年の差(?)二人会、良いですよねえ。
これまたオフィス10さんが開催されていた「扇遊・馬石二人会」も好きでした。個人的には、今松師匠と雲助門下のお弟子さんとの二、三人会がめちゃくちゃ見たい。雲助師匠との兄弟会も叶うなら見たいけど、お弟子さんとの組み合わせもなんかエモい(エモいって言いたいだけ)。

* *

三三師匠は、ああのこうのと好き勝手申し上げられるほどまだ数を拝見できていないのですが(※数聞いていれば好き勝手言っていいという話でもない)、柳家の正統派といいますか、端正な芸風の方というイメージが強かったのですが、けっこう毒もお吐きになるのですね。くすぐりも随所にちりばめられて、意外とグイグイ噺に引き寄せてこられる。
今をときめく人気者とはかくあるらんというエネルギーを感じました(すごい何様みたいな言い方だな!※良い意味です)。お相手が雲さんだからというのもあるのかな?

「五貫裁き」も「道具や」も、映像や音源でしか拝見したことがなかったので、生で聴けて嬉しゅうございました。

一門のお外の方なので、今回はトリを免れたようですが、会を重ねたらきっと雲さまの「トリやって?(へへ…)」から逃れられなくなるのでは? と思っております。楽しみです!(それにしても、雲のおじいちゃん!楽屋入ってすぐ言うのはダメでしょ!とわたしは申し上げたいw )

* *

新年早々、雲助師匠の「初天神」を聴けて嬉しかったな。大好きなんですよ、師匠の「初天神」。

金坊の一挙一動に滲みでる、おとっつぁんを慕う気持ち。こまっちゃくれ金坊だって、おとっつぁんが大好きなのよ。

おとっつぁんの真似をして団子屋さんをからかうところ、金坊がやると少しずつ動作や効果音がミニサイズになっていているのが、なんとも可愛らしい。
肩車をしてもらって、「ィエーイ」と両手で凧を上げたときの顔も、本っ当に可愛くって。あの肩車の場面で、いっつも泣きそう(すでに手遅れのときもある)になってしまうの、なんでだろうと思っていて。

雲助師匠の「初天神」は、天神様に向かうとき父子が手を繋がないから、というのはあるかもしれない。チビッコといえども、「男同士、手を繋いで歩いたりはしないんだぜ!」みたいな、金坊の子どもなりの自立心や男の見栄があるのかな? なんて、想像したりする。

でも、そんな金坊も、久しぶりの肩車にはやっぱり嬉しくなっちゃう。
あの「ィエーイ」には、まだまだおとっつぁんに甘えたい気持ちと、「もうチビッコじゃないんだぜ。おとっつぁんと同じ一人前の男だぜ」の間で揺れ動く、金坊の子ども心のほうが満たされちゃったのを感じて、すごく嬉しくなっちゃう。のかもしれない。か〜わい〜んだもん〜。

かと思えば、凧揚げの場面では「おとっつぁん、泣くな、おれがついてらァ」のときの、あの、にやりと誇らしげな顔!あそこは親子というより、男同士の連帯のつもりなのかな? と思ったりして。
え、金坊かわいすぎでは(真顔)。

今年はなんだか、団子や凧を独り占めするおとっつぁんの脇に伸びてくる金坊の小さな手が、すごく印象的だったんですよね。

この触れるか触れないかの距離感に、「そうか〜。この金坊はおとっつぁんにペッタリくっついているわけではないんだな、微妙なお年頃の金坊なんだ〜」って、なんだか腑に落ちたのでありました。また、雲助師匠のあの腕や手のサイズ感や、全体的な身体バランスが、ず……ずるいのよ〜(ためいき)。

表向き、おとっつぁんは「あいつとの付き合いは遠慮してえ」で、猫可愛がりする素振りは一切ないし、金坊もこまっしゃくれ。そんなふたりの会話の応酬だけでも十分面白い噺だと思っているのだけど、情までが見えてくると、噺の趣がまた変わってくる。

師匠の「初天神」は、父と子が程よい距離感を保とうとしているから、かえって底にある親子の信頼関係や結びつきが浮かび上がってくる、と言ったら、言い過ぎかしらね。

愛想のない団子屋や、子どもたちとグルになってる商売上手な凧屋さん。その後の酔っぱらいのしょうもない顔(だいすきw)も含めて、金坊とおとっつぁんを包む、日常のすべてが愛おしい。

昨年の「唐茄子屋政談」や「芝浜」にも通じるのだけど、高座の上に立ち現れるのがその人の見ている世界のかけらだとしたら、雲助師匠のまなざしには、やっぱり人間へのやさしさがあるなあと思ってしまう。その前提があるから、「夜鷹そば屋」の世界を可能にできる人なんだ、とか、新年から勝手なことをつらつら思ったりもします。

今年はできる限り雲助師匠を優先するのだ!と誓った新年一発目の落語会でありました。

桃月庵白酒独演会〜本多劇場編

桃月庵ぼんぼり 道灌
桃月庵白酒  長屋の算術 / 松曳き
〜仲入り
桃月庵黒酒  岸柳島
桃月庵白酒  幾代餅

20230105
本多劇場

毎年開催されているオフィスねこにゃさんの本多劇場の会に、今年もまた。

雲助師匠に続き、新春早々「幾代餅」を聴けてしまった……!
「幾代餅」やっぱりサゲをつけてらっしゃいましたね。年末の会でかけられたときのことを、ネットラジオで「たまたま袖で思いついてやってみた」(!)と仰っていましたが、しばらくこのやり方でいかれるのかな?

このサゲについては前にも書いた通り、わたしは慣れるまでちょっと時間がかかりそう。思うところはあるけど、噺家さんに自分の期待を押し付けたいわけではないので、回を重ねるごとに自分の受けとめかたの変化も楽しんで参りたい所存。

ネットラジオといえば。JUJUさんが「『松曳き』を生で聴きたい」とのメッセージを寄せていたので、この日「松曳き」がかかって、「もしやJUJUさんいらしてる?!」と密かに思っていました。それでも、客席を見渡したりしないのが、わたしのエライところです(知らんがな)。
白酒師匠の松曳き、最高だよねぇ。久しぶりに生で聴けて嬉しかった!

鈴本演芸場初席 第三部

(途中から)
林家きく麿 歯ンデレラ
ペペ桜井
宝井琴調 愛宕の春駒
柳家さん生 百面相
米粒写経
桃月庵白酒 代書屋
五街道雲助 勘定板
柳家小菊
入船亭扇遊 初天神
〜仲入り
太神楽社中
春風亭一朝 湯屋番
ロケット団
柳家喬太郎 つる?ウルトラver
林家正楽
柳家三三 探偵うどん

20230107

三が日のことがあって、今年も初席にはお邪魔できないかな……と思ったけど、思い立ってえいやっ!と、鈴本さんに途中から。初席はやっぱり良いねえ。師匠方のお元気そうなお顔を見られるのは、嬉しいねえ。

Twitterに残していないところだと、扇遊師匠の「初天神」のおとっつぁんが、蜜を狙い撃ちにいってないのが印象的だった(別に他の方も狙いにいってるわけではなかろうがw)。なんか割と大人なおとっつぁんじゃない? と思ったので、ぜひ最後まで拝見してみたいです。

浅草演芸ホール初席 第四部

(途中から)
金原亭馬生 ざるや
橘家竹蔵  正月三平小噺(漫談)
ニックス
柳家小満ん 鯉泥
桃月庵白酒 長屋の算術
五街道雲助 勘定板
ダーク広和
柳家小平太 馬のす
柳家喬志郎 手討ち姫
柳家小ゑん 雑俳
柳家小菊
柳家さん喬 幾代餅

20230110

鈴本で雲さんの「勘定板」回に遭遇してしまったので、せっかくだから浅草演芸ホールにも「勘定板」揃えにいってきました(何故)。

そしたらまさかの、初席の期間中に、雲助・白酒・さん喬のまったくタイプの異なる三師匠で「幾代餅」を続けて聴けてしまったという。
よかった!と素直に言いたいところなのですが、自分自身が現在非常に迷走モードなので、幾代太夫がなぜ清蔵には身を任せてもいいと思えたのか、いや全然わからん!!ってなり始めている。多分考えちゃダメなやつ。THE・迷走。演者さんのせいでは、全くない。

そうそう、今まであまり気にしてなかったのだけど。さん喬師匠版だと「会う」ではなく、「(幾代を)買う」という表現を多めに使われていて。
瞬間ンっと引っかかりはするんだけど、当時としてはその感覚が正しいよなぁとも思ったり。さん喬師匠版は、清蔵が思いを吐露する様子がとても切実だから、嫌な感じがあんまりしないんだよね。

それにおかみさんが恋煩いを笑ったりしないので(どこかの古今亭とはちがう!)、女性陣をとても柔らかく描いている。さん喬師匠にかかると、皆がみな、善なる人々……。しっとりとした読後感を抱えながら、演芸ホールを後にしたのでありました。



すでに一月に素晴らしい会ばかり出会えてウハウハしておりますが。
今年もまた、たくさんのたのしき高座、すばらしき高座の目撃者となれますように……!

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