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あの時間を空間ごとふわっと抱きしめたい、そんな幸せな時間が流れていた山食堂。

「数年前からずっと気になっていたお店」というものが、いくつかある。でも、たいてい「今はお腹すいてないしなぁ」とか「ご飯はお家で食べればいっか」なんて後ろ髪引かれつつも入ったことはない。

原因は、とにかく「はじめて」みたいなものに弱すぎることと、根っからの引きこもり体質なこと。旅先だと「もう一生行けないかもしれない」とあちこち飛び回れるのだけれども「いつでも行ける」と思うと、ついつい後回しにしてしまう。だから、Google map のピンだけが増えていってなかなか消化されない。

それをよく知っているわたしの周りの人たちは、ご飯に行こうとなると「さんまりちゃんのピンから探そうか」と声をかけてくれる。本当に本当に、周りが優しすぎる。おかげで、この夏やっと、4年くらいずっとピンがつきっぱなしだった清澄白河の山食堂さんへ。

木場公園や東京都現代美術館、清澄白河周辺を散策するたびにお店の前を通っていたこのお店は、季節料理と酒の店。料理を注文する際には、二杯以上は必ずドリンクをとのこと。

予約は、InstagramのDMからできたので電話が苦手なわたしが予約を担当してみることに。事前に「聴覚障害があるんです」と伝えてみたところ、「筆談を交えながらやりとりしましょう」とお返事をいただけたのでほっとひと安心。

日が暮れる少し前、お店の中に入るともうお酒を飲んでいるお客さんが。薄く明るい時間に飲むお酒って、なんだかちょっと贅沢な気持ちになる。

金柑シロップをボタニカル&ベリーだけで造ったというスピリッツで割った爽やかな果実酒からスタート。mitosayaさんのジン、SNSで拝見してからずっと気になっていたのでまさかここでいただけるとは!とにかくスッキリしていて、金柑の甘さがまたとてもおいしくて。

お料理はどれも、季節の食材が使われていて。どんな食材が使われているのか、どうやって食べるのか……。そういう情報って口伝なことが多いから、こうやって丁寧にメモにしていただけるのすごくすごく嬉しかった。

皮を剥きながら筍をポリポリと食べたの、人生ではじめての経験だったんだけど、とにかくおいしくて。お酒が進むのなんの。

食後のデザートは、焼きたてのアップルパイ。お食事もデザートもドリンクも全部、素材の味がしっかり分かる味付けで。お料理って、その素材のそのものの味をよりしっかり味わうための一手間なんだろうなぁなんてことを感じながら。

手話をしていても、筆談をしていても、誰からも珍しがられることもなく、あの憧れの風景の一員になれたこと。とんでもなく美味しい食べ物と飲み物を味わえたこと。あの時間をあの空間ごとふわっと抱きしめたい、そんな幸せな時間が流れていた山食堂。

明日は雨かもしれない。そんな帰り道のムワッとした空気もまた、夜散歩にはちょうどよくて。季節がめぐるたびに、何度も何度も訪れたいと思う素敵なお店に出会えた2023梅雨の合間の夜のこと。

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