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秋。あともう少し、わたしたちに穏やかな時間を。
週末の昼下がり。朝ご飯というべきなのか、昼ご飯と呼ぶべきなのかよく分からない、でもブランチと呼ぶには洒落っ気のない平日の残り物を炒めたモノは想像以上にたっぷりで。それらをお腹に詰め込んだらふわっと眠気が襲ってきて、気付いたら西日が差し込んでいた。
隣の人が、寝ぼけ眼なわたしをみてニヤッと笑う。そしてその人の指が近づいてきて「ちょっと目を瞑ってごらん」と言われたので、仰せのままに目を閉じると、大きな指がわたしの頬をちょぴっと強くこすった。
あらまぁ恥ずかしい。食べ物でもついていたのかしら。
と思っていると、その人の声が聞こえてきたような気がする。補聴器を外していたので、それは指伝いの振動で伝わってくるモノだったけれども、おそらくきっと「もう目を開けても良いよ」という合図だったのだろう。
ゆっくり目を開けようとすると同時に、その指が肩に降りてきて、そのままトントンとわたしの肩を叩いた。たぶん、目を開けるのとトントンはほぼ同じタイミングで。
目を開けると目の前の人の口が「もういいよ」と動いていた。
なぁんだ。目を瞑ったわたしが音のない世界にいるということは、すっかり了承済みなのか。当たり前の前提かもしれないけれども、音の世界の人がふわっと音の世界と音のない世界の狭間にやってきてくれるのは、いつだってむずがゆい。うれしい。
思わずふふふと笑っていると、「え、キコエタの?」とびっくりした顔で尋ねられてしまった。
「そんな気がしたのよ」
なんだかとってもこそばゆくなってきてしまったので、そのままお水を飲みにキッチンへ逃げてしまった。つい先日まではちょっとぬるいくらいだった蛇口のお水は、いつのまにかひんやり冷たいお水に変わっていた。
秋、なんて心地よい季節なんだろう。長い長い夏を経てやっと来てくれた秋さんよ。あともう少し、わたしたちに穏やかな時間を注いでくださいな。
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