豊洲市場の大卸を取り巻く環境とは?Vol.14
皆さん、こんにちは!
豊洲市場で7社しかいない水産の卸売会社(大卸)である綜合食品を束ねるIさん。異業界から飛び込んだ「卸」の世界。どんな世界が広がっていたのでしょうか?
Iさんにとって、SANKO、綜合食品とはどういう会社ですか?
SANKOの飲食事業と綜合食品の水産大卸は、食という親和性はあるけれど違う業界です。両社とも物凄いチャレンジを与えてくれるステージだと捉えてます。
転職されて、1ヵ月で綜合食品に異動になりました。異動当初はどうでしたか?
豊洲に卸とか、市場があるのは知っていましたが、市場の構造自体も分かっていませんでした。それこそ大卸と仲卸の違いも知らない状況からのスタートで、少しずつ勉強をして今に至ります。
☆ここで、プチ知識☆ 卸売業者・仲卸業者の違いって?
【卸売業者(大卸)】
生産者から販売委託を受け、市場で仲卸業者などに「競り」で販売する業者。営業するには市場開設者からの許可が必要。
【仲卸業者(仲卸)】
卸売業者から「競り」を通じて生産物を購入し、市場内の店舗で飲食店や小売業に販売する。
綜合食品では、どういったことをされていますか?
基本的には組織全体の取りまとめ役です。加えて、今まで豊洲市場のなかの商売がメインでしたが、今後は市場外の営業を進めていくところを担っています。
海外への輸出もスタートしました。手応えはいかがですか?
香港への輸出をトライアルとして2月末からスタートしました。浜松・沼津・下田という拠点を持っている強みをまさに発揮できたなと感じます。日本の水産物の種類の多さ、品質が現地では評価されています。
香港のホテルにあるレストランに、下田の地金目を送ったんですが、めちゃくちゃ好評です!
海外への水産物の輸出で、ご苦労はありましたか?
それはもう。笑
もちろん産地の力も借りながらですが、海外向けだと生鮮物の取り扱い方が違うので、下田・沼津から持ってきたものを、豊洲で海外向けに梱包しなおして飛行機に載せています。香港だとフライト時間が3~4時間くらいなので、当日の夕方に届きます。
それでは、このあたりで市場の1日の流れを教えていただけますか?
営業メンバーと事務メンバーに分かれています。営業メンバーは朝3時~昼12時まで、市場は3時から準備を始めて5時くらいからお客さまが来られます。朝5時からスタートして、シラスだけは競りをやるんですよ。競りをしなさいと指定されている商品なので。
事務メンバーは8時半~17時半になります。
競りを指定されている商品ですか?なぜそんな指定が?
豊洲市場は日本、特に東京の食を支える役割を担っているので、世の中に広く出回る、影響をあたえる商品については競りをして適正な価格を維持しなさいというシステムです。
全体として魚価が上がってきているように感じますが、何か打つ手はあるのですか?
魚価の高騰の要因は、物価高ももちろんありますが、もっと以前から少しずつ上がってきています。1番は魚が獲れない、希少価値や量が減ると価格は上がります。加えて、地球規模の気候変動で海中の環境も変わってきていると、業界でもよく話題に上がっています。
漁師が少なくなっていることも影響していますか?
まさに水産業界の大きな課題で、特に日本のほとんどの漁師は後継者不在のまま今日に至っています。
課題山積の水産業界ですが、会社をどうしていきたいですか?
先ずは生産性の向上が急務です。紙主体の業務からスマホやパソコンに慣れてもらうところからスタートして、情報共有の体制を進めています。それぞれ各ジャンル、商品のスペシャリストなのですが、個人商店の集まりのようになっていて、この個人戦をチーム戦に切り替え、さらにはノウハウの継承で、1+1を3,4にしていく。
豊洲市場に描く未来とは?
年間5,000億ほどの取引額が豊洲ではありますが、綜合食品は最盛期90億の売上を上げておりこれを超える売上高を目指していきたいです。
他の大卸から売上を分けてもらうのではなく、新たに市場を創造してプラスの数字を作っていきたい。
9歳の娘が美味しい魚を食べられる未来を創るために、邁進するのみです!