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オフサイドすら知らなかった私がチャントを歌う日まで⚽

どうしてゴール入ったのに取り消されたの?
その答えを知るまでに30年かかった。


スポーツにはあまり縁のない人生を送ってきた。

子供の頃、野球中継が延長になって好きなテレビ番組が休止するのも腹が立ったし、2時間もテレビを占領した挙句0-0で終了するサッカーも時間を無駄にされたように感じていた。

点が決まったと思ったら取り消されるオフサイドの意味がわからなかった。


そんな私も、子どもがサッカースクールに入会したのをきっかけに少しずつサッカーに興味を持てるようになってきていた。


サッカースクールに入ってから4年。
小学生になった子どもたちに、プロの試合を見せてあげようということになった。家族5人で行く初めてのJリーグ。会場は新しくなった国立競技場。

まずは人の多さに圧倒された。しかも赤チームと青チームが分かれている。この日、ホームはヴィッセル神戸で、神戸から赤い軍団が東京に駆けつけていた。

私たちは川崎フロンターレのサポーターとして会場の前に到着したのだが、周りを見渡せば青の軍団が周りを取り囲んでいる。私たち家族は、そのどちらの色でもなかった。別にそれでも何の問題もない。だけど。

「ユニフォームを買おうと思う。」
夫の一声で会場入りする前にグッズ売り場に並ぶこととなった。子供心をくすぐるアイテムがたくさんある中、この日はユニフォームとタオルを購入。

それぞれ買ったばかりのユニフォームに着替えて指定席に座った。

なんという臨場感!!


思った以上にピッチが近い。もっと米粒みたいにしか見えないと思っていたけれど、ボールも、選手の顔も、しっかりと見えることが分かった。

さらに圧倒されたのが、熱い熱いサポーターだった。

巨大な旗が上下に揺れる。
全員が、同じ歌を歌う。まだ試合前だというのに太鼓のリズムに合わせて、サポーター席の人々はずっと立ったままぴょんぴょんとジャンプしながら大歓声を送り続けていた。

手作りした応援フラッグ


この時点でもう、ワクワクが止まらない。
夫が焼きそばやお菓子を買ってきた。もはやお祭りだ。太鼓のリズムと歌と焼きそば。うん。お祭りに違いない。


試合が始まると、私たちはさらに夢中になった。テレビで見るよりももっとムキムキの太もも。激しいぶつかり合いは痛そうで顔をしかめたし、横から見てると入ったかと思わせるシュートに、あげた拳の行方が分からなくなったりした。

キーパーのキックで高くボールが上がった時、口をまあるく開けて空を見つめてしまった。ひと蹴りでこんなにボールが飛ぶなんて!

生で見る試合の面白さはこれだけじゃなかった。
控えの選手がアップしてるのが目の前で見えた。ゴムチューブを腰に巻いて、トレーナーを引っ張りながら前に進むトレーニング。太ももをこれでもかと高く上げながら走るトレーニング。テレビに映らない場所で、選手たちがこんな風に汗を流していることを初めて知った。

ハーフタイムでお菓子とジュースを補充し、声を限りに応援したけれど、この日は負けてしまった。

驚いたことに、試合終了後、選手たちがサポーター席まで来てお辞儀をしたり手を振ってくれたのだ。サポーターもまた、大きな声援と拍手で選手を称えた。

贈られた拍手に勝ち負けなど関係ない


不思議な満足感と充実感が私たち家族を包んでいた。

試合帰り、どこのファミレスもカフェも赤と青の軍団があちこちにいた。今日の試合はあーだこーだと振り返りながら、その顔はキラキラとして見えた。



それから、だ。

我が家はJリーグ会員になり、DAZNを契約し、ほとんどのホームゲームを見に行くこととなった。

何度も試合を見ているうちにオフサイドの意味がやっと分かった。ゴールが取り消されるたびに「またオフサイドか!」と握った拳をパーにして脱力したし、そのうち副審が旗をあげたのを見るだけで「……オフサイドだな」と呟くほどにまで成長した。


さらに、チャントを覚えた。
チャントというのはサッカーにおける応援歌のことで、チームの歌の他に選手それぞれに応援歌がある。

川崎フロンターレ小林悠選手の応援歌の元ネタはアンパンマンだからすぐ覚えられた。

家長昭博選手は鉄道唱歌、山田新選手はJUDY AND MARYのOVER DRIVE、橘田健人選手は中山美穂のWAKUWAKUさせて。あとは歌詞さえ覚えれば合唱できる。

これらを覚えてから試合会場に行くと一体感がうまれて、さらにお祭りを楽しむことができる。


お祭りなのは気分だけじゃない。
ホームゲームは本当にお祭りだということを知った。

休日の試合、19時キックオフだというのに昼間から試合会場は熱気に包まれる。たくさんの出店が立ち並び、催し物も目白押しだ。


選手のグッズがもらえるスーパーボールすくい


目の前に選手が来てくれた輪投げ。
憧れの人を見つめる子どもたちの瞳は
キラキラと輝いている。

ポニーが来ていて乗馬体験が出来る日もあったし、カブトムシの幼虫をつかみ取りできる日もあった。ヤギのレースやストラックアウトもあった。もちろん、かき氷やたこ焼き、焼きそばも買える。

中村憲剛選手のトークショーは爆笑だった。


小学生までの後援会会員は
試合のたびに選手カードがもらえる。


好きな選手を見つけるもよし、好きなチームを見つけるもよし、単純にお祭り騒ぎが好きならそれもよし。

試合中の2時間はみんなで同じものを見て、同じものを応援している。会場には数万人のサポーターがいて、皆が同じものを推している。

我が家は川崎フロンターレのサポーターだけど、相手チームの素晴らしいプレーを見たりすると「この選手はすごい」とか「このプレーはやられたなぁ」なんて他のチームや選手も気になりだす。他のチームのホームゲームもお祭りなのかな。いつか行ってみたい。

ちなみに三苫薫選手も田中碧選手も川崎フロンターレ出身である。誇らしい。


最近知ったのだが、サッカーには色々なリーグ戦がある。

Jリーグ(明治安田リーグ)は後半戦に入った。
天皇杯はもうすぐ終わる。
AFCチャンピオンズリーグは始まったばかり。

さらに、2026年ワールドカップのアジア最終予選は来週、地上波でテレビ中継がある。



まだ一度も生で試合を見たことがない方はぜひ、試合会場に足を運んでみてもらいたい。

オフサイドを知らなくたって大丈夫。
選手を1人も知らなくたって大丈夫。

お祭りだと思って足を踏み入れたら、そこには興奮と熱狂の新しい世界が待っている、かもしれない。

グッズ集めに夢中



▼小林悠選手のインタビュー記事がこちらで掲載されています





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