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心が深まる本たち

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記事一覧

「許し」による承認――マルクス・ガブリエル『わかりあえない他者と生きる』より

マルクス・ガブリエルさんという哲学者は、最近、倫理資本主義を提唱しています。 彼の提案に…

目の言葉と耳の言葉――1つのものを2つに分けないことの効用

少し前から、本を読んでいても頭に入ってこないことがあって、私が変わったのか、それとも外が…

サステイナブル・ライフとマルチチュードーー上野千鶴子『サヨナラ、学校化社会』より

社会学者のT.W.アドルノらは、権威主義パーソナリティという概念を提唱しました。権威主義パー…

母なるものからの社会批評――中村佑子『マザリングーー現代の母なる場所』より

社会学者ジョン・アーリは『社会を越える社会学』という本の中で、もっぱら男性の時間となって…

「甘え」がもたらす癒し――アラン・N・ショア『右脳精神療法――情動関係がもたらす…

いま、心理療法の世界ではパラダイムシフトが起きていると言われます。 一言でいえば、「情動…

自己(Self)の暗黒面――D.カルシェッド『トラウマの内なる世界』より

D.カルシェッドは、日本ではあまり有名ではないのですが、カルシェッドの言う「セルフケア・シ…

救済のひとつの道――グッゲンビュール‐クレイグ『結婚の深層』を読む

A.グッゲンビュール-クレイグはユング派分析家のひとりで、この本は、深層心理学的な観点から結婚について書いてあります。 子どもをもつことや結婚・離婚は、誰にとっても大きなテーマで、多くの方が悩まれていることでもあります。 社会学的には、結婚することは「自立」として周囲から承認される機能をもつとか言われたりもしてきました。一方で、フェミニズムからは、結婚しなければならないという強制からの解放が謳われたりしてきました。 様々な考え方がありますが、グッゲンビュールークレイグに

"The Art Of Loving"(エーリッヒ・フロム『愛するということ』より)

エーリッヒ・フロムは、社会(心理)学・精神分析・哲学とを通して、「人間」について深く考察…

絵本が伝える生きる知恵――「フクロウの声が聞こえる」

絵本の読み聞かせは、小学校の教育委員会でも研修しているテーマです。絵本に描かれていること…

野口整体が考える「健康」について

野口晴哉さんという方が創始した野口整体は、いまでは自然健康法として知られています。 私が…

ノイマン『女性の深層』と個性化

神話とか昔話とかを、人間の心の発達という観点からみるのは、けっこう面白いと思います。 人…

「ひとりの人間にとって大切な問題は、必ず多くの人間にとって、大切な問題とつながっ…

と言ったのは、社会学者・見田宗介さんです。見田さんは、真木悠介というペンネームをもってい…

ホスピタリティ(もてなし)とヴァルネラビリティ(傷つきやすさ)の力について

随分前に、繰り返し読んだ本の中に、哲学者・鷲田清一さんの『「聴く」ことの力』があります。…

『君に友だちはいらない』(瀧本哲史)の意味

エンジェル投資家であり京大で研究・教鞭をとっておられた瀧本哲史さんは、これからの時代を生きる人たちに向けて、たくさんの素晴らしい本を残されました。 これからの時代に、とりわけ私たち日本人にとって、獲得していくべき思考法であったり、人とのつながり方であったり、近年、対人援助職領域でも課題となっているチームの作り方だったりにおいて、とても参考になることが書かれています。 瀧本さんのご提案される考えは、経済界においてもパラダイム・シフトだったようです。瀧本さんは、「パラダイム」