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「猫君」を読んで猫又を想う

吉原で髪結いをして暮らすお香。
易者だった亭主の新助は四十になる前に死んでしまった。
子どももおらず先々が心配だったが、髪結いの仕事がお香を助けた。

一人暮らしに慣れた頃、亭主と縁のあった占い師、和楽がやって来た。
「良き縁を持ってきた」
蜜柑色のふわふわの毛をした子猫だった。
右目が青で左目が黄色をしている。
そして和楽は猫又について語り始めた。



「あら、じゃあこの蜜柑色の猫ちゃんも、猫又になりそうな、筋の良い猫なんですね。それで和楽さんはあたしに、二十年以上大事に飼うよう、頼んできてるんだ」



こうして始まった茶虎の雄猫みかんとお香の生活。
二十年まであとひと月ほどという時にお香が病で亡くなってしまった。
長屋の人たちに二又に分かれた尻尾を見られ、話ができることも知られてしまい、お香を取り殺した猫又だと追いかけられ、みかんは必死に逃げた。
亡くなったお香を置いて飛び出したことを悲しみ、涙をこぼしながら走り続けるのだ。(私の泣くところです…。)

間一髪のところで、先輩猫又に助けられたみかん。
新米猫又として、学び舎である「猫宿」に入ることになった。
この年、ある噂が立って猫又たちが騒いでいた。
新米猫又の中に「猫君」がいるというのだ。
猫又の英雄と呼ばれる「猫君」。それはどんな存在なのか。
果たしてみかんたち新米猫又の中に、本当にいるのか。
先輩猫又と自分たちのプライドをかけて戦うみかんたちの合戦も、とても頼もしいものだ。

「猫宿」は江戸城の中にあり、猫又の世界で中立を保っている。
第11代将軍家斉公の時代設定だ。他にも超有名な武将も登場してとても驚いた。
猫好き、そして長生きしてくれることを切に願い、さらに歴史好きなら楽しめること間違いなしのファンタジー小説だ。



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