映像系美大卒がRENT見たらマークがインドに行かないか心配になった話
日米合作ブロードウェイミュージカルRENT最高ですよね。
推しの山本耕史が21歳で演じた後にずっと焦がれ続けて26年ぶりに同じ役を全編英語でBWキャストと共に演じるというあまりにも『スタァライトされちゃった舞台じゃん』ということで速攻でチケットを抑えたオタクです。
実は始まる前は自分はあんまり好きじゃないタイプのお話かな~と思ってたのですが、幕が開いたら歌の力と「愛愛愛優しさ優しさ愛愛」みたいなエグいコンボ連打ですっかり虜になってましたね。
「La Vie Bohème」とか歌詞に全然共感できない、というかマジで何がなんだかわかんないけどなんだか納得してしまうから強い。助けてくれ。
そんなRENTにですが、個人的に語り部ポジションの登場人物マークについて自分が感じたことをつらつらと残しておこうかと思います。
マークは映像作家なのですが、自分も大昔に東京の美術大学の映像系の学科を卒業した身なのでRENTを何度も見れば見るほど自分の大学時代のことを思い出してしまうんです。
なのでいわゆる公演レポでは全然ないと思ってください。
映像作家志望は金がかかる。特にフィルムカメラは。
マークがフィルムカメラを使っている所を見ると、自分の大学時代を思い出します。
私が通ってた所はどっちかっていうと「映画」とかではなく「実験映像」みたいな作品がメインで、先生もゴリゴリ70年代アヴァンギャルドな映像作家だったりしたから2000年代も後半なのにマークが持ってるようなフィルムカメラでやたら撮らせていたのです。
そしてこのフィルムの映像カメラでの作品作りは金がマジでかかる。
カメラは学校で貸し出してくれるけどフィルムは学生にはクソ高いし(8mmと16mmの規格があって2分30秒くらいしか撮れないのに5000円とかしてた。)現像も1本1万円(尺によって違うけど5分くらいの価格)とかだった記憶……。
※他の大学はそんなにフィルムで撮らせずにデジタルビデオカメラだったんじゃないか説があります。
ちなみに、新演出版だとマークもデジタルのビデオカメラ使ってるらしい。
1989年だとまだビデオカメラも高価だし編集機材もTV局とかの業務用とかじゃないと無理だったろうから、マークはフィルムカメラを使っていたのかな?と思うんですがどうなんでしょ。
フィルムのいいところは現像したフィルムを切ってテープでくっつければ「編集」ができるところ。(一応、専用のカットする機材とセロテープみたいなくっつけるテープがある)
そんなわけでとにかく1989年ごろに映像作家を目指していたマークはハチャメチャにフィルム代と現像代に生活費を持っていかれてたのでは?
ということがよぎるわけです。
SNSで見た感想でマークだけ他メンバーと違って作中衣装替えが無い(ボーダーのセーターとマフラーに上着があるか無いかくらいの違い。)というのがあったけど、もしかしたらマークは服を買うくらいならフィルムと現像代に使っていたからなんじゃなかろうか?
(他のアーティスト活動やってるロジャーは極論ギター一本あればできるし、ストリートドラマーのエンジェルもバチとバケツがあればどこでもいつでもパフォーマンスができる。
モーリーンは機材と会場費がかかるけどパフォーマンス用衣装として使うことも考えれば服をたくさん持っててもおかしくない)
まあ、もしかしたらRENT初演時の予算の都合とか、マークは割と語り部的に出ずっぱりだから出ハケの関係で着替える時間が無いとかかもしれませんが。
あとは他メンバーは「恋人と一緒に出かけるという状況が多い」からおしゃれしている説もありますが……その考え方は「シングルでも自分のために好きな服を着ていいはずだろ」と悲しくなるので多分違うということにしておきましょう。
RENT初日に見た後の感想の1つに「この人たち2024年に生きてたら割とYouTuberとかクリエイターとして食っていけそうだよな」というものがありました。
1989年と比較すると2024年はスマホと無料の映像アプリさえあれば「映像作品」は誰でも撮れるし簡単に編集して、YouTubeやtiktokとかInstagramやXで発表して収益化もできるなんて、マーク達にとってはある意味天国みたいな時代かもしれません。
(ただ、同時にライバルが多すぎて地獄みたいな時代でもありますが。何ヶ月もかけて作った動画よりも、かわいいネコチャン動画や、知らない国の屋台でココナッツがカットされていく動画のほうが何百万倍も再生されたりする世界です。)
ちなみにYouTubeのキャッチコピーは「好きなことで、生きていく 」。
これって、まさにマークが理想としてた生き方に近いのでは?
まぁ、YouTubeで食べていくには動画を頻繁にアップしたり、毎日配信したりしなくちゃいけなくてある意味「編集奴隷」に近い生活も覚悟しなくてはいけないらしいので結局甘くはなさそうですが……。
ジョナサン・ラーソンがもし今も存命だったら2024年を舞台にしたYouTuberやインフルエンサーみたいなネット時代の若い表現者達の青春ミュージカルを作ったらどんな内容になるのかなとか妄想してしまいます。
とりあえずYouTuberのマークとボカロPのロジャーかな……。
友達とのなかよしYouTuberグループでやってくはずだったのに、金のために魂を売って、AIずんだもんやゆっくりボイスで芸能人のゴシップネタまとめただけの動画を編集するマーク…….。
白と黒で縁取りした赤や黄の色彩の暴力みたいな太字ゴシックのテロップまみれの画面編集させられるのかわいそう…..。
現代の身近な事例に置き換えて考えると、作中アレクシーからの仕事を「魂を売る」とジョナサンが例えたのかも分かる気がします。
ちょっと長くなったので、全然タイトルのインドに行くマークの話が出てきていませんが別の記事に続きます。