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激辛と激甘の間

打ち合わせでも利用する馴染のカフェが、新メニューを出した。新メニューと言っても特段斬新なものでもない、よくある「激辛カレー」だ。店内に不釣り合いなほど大きな掲示が掲げられている。
 
特別な唐辛子を入手したので、期間限定メニューとして提供しようということらしい。辛味はストレス緩和に効果があると聞いたことがある。なるほど、防災食にカレーが多いのはその効果も期待しているのだろう。
せっかくなのでさっそく食べてみたが、「激辛」と謳うだけあり、さすがに辛い。これほど辛いカレーははじめてだ。
 
辛いものを食べると、その反対に位置するもの、例えば甘いものを食べて中和したくなる。自ら過剰な刺激を求めておきながら、さらにそれを別のもので中和させたいというのだから、人間というのは欲深いものだと常々思う。
しかし、両極端に位置するふたつを往復することは良い経験になる。いわゆる「振り幅が大きい」ということだ。振り幅が大きければ大きいほど、その両端までの空白を往復の道程として埋めていくことになるから、経験や見識はぐっと広がる。
今回のことで言えば、次に食べる「辛さ」を測る良い指標を得ることができた。
 
ビジネスのシーンでも同じではないだろうか。
強みに特化し、突き抜け、追随を許さないレベルに達した唯一無二のユニコーンは、事業創出として大きな成功と言える。しかし同時に視野が狭くなり、比較対象も不明確になる危険をはらんでいる。客観視できなくなると、現在位置の確認も難しくなり、進むべき方向や判断基準が揺らいでしまう。どんなに勇猛果敢なユニコーンであろうとも、脇目も振らず突進しているだけでは、いずれ森の中で足を滑らしてしまう。
 
辛いものと甘いもの、剛と柔、喧騒と静寂...、相対する両端を意識して行き来する。振り幅が広いほど、その間のことも身に付けられる。両端のふたつへの解像度もあがり、相互の価値がよく見えるようになってくる。
 
「これってどう思いますか?」と、同じ組織内でも業務上の接点がない人に話しかけてみよう。その人に予備知識がなければ、あなたはさらに幸運だ。きっと思いも寄らないヒントが見つかる。

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