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風に立つ【読書記録8】


問題を起こし家裁に送られてきた少年を一定期間預かる制度ーー補導委託の引受を突然申し出た父・孝雄。南部鉄器の職人としては一目置いているが、仕事一筋で決して良い親とは言えなかった父の思いもよらない行動に戸惑う悟。納得いかぬまま迎え入れることになった少年と工房で共に働き、同じ屋根の下で暮らすうちに、悟の心にも少しずつ変化が訪れて……。家族だからこそ、届かない想いと語られない過去がある。岩手・盛岡を舞台に、揺れ動く心の機微を掬いとる、著者会心の新たな代表作!

 問題を起こした少年の家族と、その少年を受け入れる家族。2つの家族のお話です。

 悟さんは、お父さんが急に補導委託を受けたことに反発します。 
 それで、やってきた少年となるべく関わらないようにしようとするのですが、うまくいきません。
 また、お父さんのことを冷たい人だとずっと思っていたのですが、周りの人はお父さんのことをとても評価しています。それに納得できない悟さんのもどかしい気持ちがとても丁寧に描かれています。
 そんな中、少年と生活することで、今まで見えてなかったお父さんの気持ちが少しずつ理解できるようになっていきます。

 そして、少年も悟さんたちと暮らすことで、自分のやりたいことを見つけ、両親とも向き合う勇気を得られます。
 この少年のお父さんは、少年のことを大事に思う気持ちが強すぎて、支配的になっているようでした。

 この本を通して、親子だから分かり合えるものではないということが、よくわかります。

 特に悟さんは、ある女性に言われた
「人なんてさ、どんなに話し合ったって百パーセントわかり合えることなんてないんだよ。もしそう思っているやつがいたら、あたしからすれば傲慢だよね。(略)  だから、思ったことはできる限り言葉にしないといけない。気持ちなんて、それでやっと自分が言いたいことの数パーセントが伝わる程度なんだから。しかも、それが近くにいる人だったらなおさらさ。近すぎて見えないこともあるからさ」

 という言葉が、身に染みました。


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